2022年にボクたちが目指す「ものづくり」
新しい年を迎え、謹賀新年の挨拶が早くも寒中見舞いに変った。
時間の経つその速さに胸が詰まる。
一年の計は元旦にあり、すでに1月も残り少なくなったが、サテ今年をどういう一年とするのか。
アメリカや欧州ではピークを越えたといわれるオミクロン株が少し遅れていま日本各地で猛威を振るっている。
コロナ感染の第6波は誰もが予測していたが、感染力が尋常ではないようなので、仕事への影響はこれまで以上に大きいだろうと警戒している。
今年もまたコロナに振り回される1年になるとの覚悟とその備えが必要のようだ。
ところで、昨年の12月から年初にかけて、NHKを中心にオルタスジャパン制作の番組が10本ほど放送されたが、その中にコロナ時代の生き方をテーマとした番組が2本あった。
共に筑波大学准教授でメディアアーティストの落合陽一氏をメインキャストとするドキュメンタリーだが、ひとつは暮れにNHKBS1で、あと1本はNHK総合での放送だった。
この年初の「落合陽一と考えるコロナシフト後の日本のものづくり」は示唆に富む内容だった。
わが社で制作した番組について、これまでブログでコメントしたことはないが、今年一年を考える上で制作会社にとっても多くのヒントがあると思い敢えて筆を執った。
かつては、ものづくり王国として世界をリードしていた日本だったが、今や衰退の一途だ。
その大きな理由のひとつが、大手企業の基礎研究所の廃止にあったという。
この30年余、日本の企業はアメリカにならい株主重視の経営スタイルに変えた。
その結果、企業は株主の要求通り、より短期的な利益を得る道を選ぶことになり、時間を掛けたものづくりを止めた。
すぐに利益を生み出さない基礎研究所がまっ先に切られ、それまで多様な製品開発を支えてきた研究開発の場が次々と企業から消えて行った。
こうしてイノベーションに必要不可欠である基礎研究が企業から姿を消したのだった。
ノーベル賞を受賞した大隅良典さんや本庶佑さんなど一流の研究者たちが産業界にとっての「基礎研究の大切さ」をテレビカメラの前で強く訴えていたことを思い出す。
いつ成功するか、何が成功するか分からない基礎研究だが、これがおろそかになれば応用研究も成果を出せなくなる、と多くの研究者たちが危惧する。
かつて「失われた20年」と言いながら、その失われた意味を見直すことなく、なお効率と生産性をスローガンに掲げ続けてきた政界と財界、それを黙々と見過ごしてきたマスコミの責任は大きい。
そしてとうとう「失われた30年」となって現在がある。
ものづくりの企業にとってイノベーションの再生が必須だが、その土台となる基礎研究をはじめ、選択と集中に縛られ自由気ままな試みができない現状等々、イノベーションの生態系が崩れてしまったいま、改めて求められるものは何か。
落合陽一氏は「日本のものづくりを考え直すことが活力を取り戻すカギになる。そのために必要なのが本当の意味のイノベーションである」と言う。
そして「日本ではイノベーションを技術革新と誤って訳しているが、技術的に新しいことが重要なのではなくて、新しい価値を生み出すことが大切だ」と説く。
IT産業の先端技術だけがイノベーションを産み出す訳ではないというのだ。
世は常に変化していく。
その時々でものの価値も変化する。
いまはコロナが世界中の人びとの暮らしの形を大きく変えた。
この変化の中で人びとは何を必要とし、何を求めているのか。
何が人びとを豊かにさせるのか。
その価値あるものを創りだすことが必要だ。
新しい技術ではなく新しい価値を創造するものづくりこそが求められている。
この考えは、そのままボクたちテレビ制作の現場にも当てはまる。
テレビはいま、ネットメディアの大波の前で、その存在の意味が問われている。
これまで日本国内の動きだけで社会的にも経済的にも完結してきたテレビだったが、グローバルなネットの波はそれを許さなくしている。
ソフト面から見れば、テレビとネットの境界線はお互いに乗り入れ合っていて曖昧だが、経済面からだとすでに広告費収入はネットがテレビメディアを上回っている。
年齢層の低い世代のテレビ離れも顕著で、テレビ局の危機感は大きい。
実際にテレビ局の経営は厳しいようで、制作費は年々下がっている。
公共放送も政府から受信料の値下げが求められ大幅な制作費の削減が行われている。
そんな状況の下でボクたち制作会社はどういうソフトづくりをするのかが、まさに今求められているイノベーションである。
ところで、ボクたちの会社には二つの原則がある。
ネットメディアを視野に入れた仕事もしているが、実態としてはテレビ番組制作がボクたちの主たる仕事であり、中でもドキュメンタリーに軸足を置くことが原則のひとつである。
これは創業以来30余年続けて来たことであり今後も変わることはない。
そしてこの長年積み重ねて来たドキュメンタリー制作がボクたちの大きな武器であり、近い将来、ネットメディアでその力を発揮することが出来ると考えている。
もうひとつはスタッフの自主管理である。
会社組織である以上、ルールはあるが、規則や約束ごとは可能な限り少なくしている。
本当にこの仕事をしたい人たちが集まり、自由気ままに活躍できる場所にしたいと願っている。
ひとりひとりの個性や特徴を存分に生かせる集団でありたい。
数少ない約束ごとは必ず守るが、仕事については自分で律する自主管理、責任を周囲の所為にしない自立の精神を持つ個々の集団だ。
このふたつがボクたちの会社の原則だが、今後もこれを踏まえて価値あるソフトを産み出して行きたい。
そのために、遠回りかもしれないが、いま一度原点に立ち戻ってボクたちの仕事の意味やあり方を見つめ直すことが役立つかもしれない。
なぜこの仕事を選んだのか、何を伝えたいと考えているのか、何を伝えなければならないのか、それをどのように伝えるのかを改めて自らに問い直す作業だ。
何より企画がボクたちの命である。
価値ある企画を産み出すために一番大切なのはしっかりとした世界観を持つことである。
企画力とは、いまという時代を観察し、時代を捉える力である。
そして森羅万象それぞれの事象からその奥に潜む真相を的確に映像と言葉にしていくこと、この誠実な姿勢があれば自ずと価値あるソフトを発信できると信じている。
そしてそのソフトは必ずテレビ、ネットなどメディアを問わす人びとの心を揺さぶる力と魅力を持つ筈である。
これは、これまでずっと語り継がれてきたドキュメンタリー制作の基本なのだ。
いま一度、これら基本に立ち返り、今後の制作活動を継続して行きたいと思う。
この春4月には6名の新入社員がスタッフに加わってくれる。
ベテラン、中堅、そしてフレッシュな若者たちと共に力を合わせて価値あるソフトの制作にチャレンジしたいと思っている。
「ボクたちも コロナも必死の 春が来る」

時間の経つその速さに胸が詰まる。
一年の計は元旦にあり、すでに1月も残り少なくなったが、サテ今年をどういう一年とするのか。
アメリカや欧州ではピークを越えたといわれるオミクロン株が少し遅れていま日本各地で猛威を振るっている。
コロナ感染の第6波は誰もが予測していたが、感染力が尋常ではないようなので、仕事への影響はこれまで以上に大きいだろうと警戒している。
今年もまたコロナに振り回される1年になるとの覚悟とその備えが必要のようだ。
ところで、昨年の12月から年初にかけて、NHKを中心にオルタスジャパン制作の番組が10本ほど放送されたが、その中にコロナ時代の生き方をテーマとした番組が2本あった。
共に筑波大学准教授でメディアアーティストの落合陽一氏をメインキャストとするドキュメンタリーだが、ひとつは暮れにNHKBS1で、あと1本はNHK総合での放送だった。
この年初の「落合陽一と考えるコロナシフト後の日本のものづくり」は示唆に富む内容だった。
わが社で制作した番組について、これまでブログでコメントしたことはないが、今年一年を考える上で制作会社にとっても多くのヒントがあると思い敢えて筆を執った。
かつては、ものづくり王国として世界をリードしていた日本だったが、今や衰退の一途だ。
その大きな理由のひとつが、大手企業の基礎研究所の廃止にあったという。
この30年余、日本の企業はアメリカにならい株主重視の経営スタイルに変えた。
その結果、企業は株主の要求通り、より短期的な利益を得る道を選ぶことになり、時間を掛けたものづくりを止めた。
すぐに利益を生み出さない基礎研究所がまっ先に切られ、それまで多様な製品開発を支えてきた研究開発の場が次々と企業から消えて行った。
こうしてイノベーションに必要不可欠である基礎研究が企業から姿を消したのだった。
ノーベル賞を受賞した大隅良典さんや本庶佑さんなど一流の研究者たちが産業界にとっての「基礎研究の大切さ」をテレビカメラの前で強く訴えていたことを思い出す。
いつ成功するか、何が成功するか分からない基礎研究だが、これがおろそかになれば応用研究も成果を出せなくなる、と多くの研究者たちが危惧する。
かつて「失われた20年」と言いながら、その失われた意味を見直すことなく、なお効率と生産性をスローガンに掲げ続けてきた政界と財界、それを黙々と見過ごしてきたマスコミの責任は大きい。
そしてとうとう「失われた30年」となって現在がある。
ものづくりの企業にとってイノベーションの再生が必須だが、その土台となる基礎研究をはじめ、選択と集中に縛られ自由気ままな試みができない現状等々、イノベーションの生態系が崩れてしまったいま、改めて求められるものは何か。
落合陽一氏は「日本のものづくりを考え直すことが活力を取り戻すカギになる。そのために必要なのが本当の意味のイノベーションである」と言う。
そして「日本ではイノベーションを技術革新と誤って訳しているが、技術的に新しいことが重要なのではなくて、新しい価値を生み出すことが大切だ」と説く。
IT産業の先端技術だけがイノベーションを産み出す訳ではないというのだ。
世は常に変化していく。
その時々でものの価値も変化する。
いまはコロナが世界中の人びとの暮らしの形を大きく変えた。
この変化の中で人びとは何を必要とし、何を求めているのか。
何が人びとを豊かにさせるのか。
その価値あるものを創りだすことが必要だ。
新しい技術ではなく新しい価値を創造するものづくりこそが求められている。
この考えは、そのままボクたちテレビ制作の現場にも当てはまる。
テレビはいま、ネットメディアの大波の前で、その存在の意味が問われている。
これまで日本国内の動きだけで社会的にも経済的にも完結してきたテレビだったが、グローバルなネットの波はそれを許さなくしている。
ソフト面から見れば、テレビとネットの境界線はお互いに乗り入れ合っていて曖昧だが、経済面からだとすでに広告費収入はネットがテレビメディアを上回っている。
年齢層の低い世代のテレビ離れも顕著で、テレビ局の危機感は大きい。
実際にテレビ局の経営は厳しいようで、制作費は年々下がっている。
公共放送も政府から受信料の値下げが求められ大幅な制作費の削減が行われている。
そんな状況の下でボクたち制作会社はどういうソフトづくりをするのかが、まさに今求められているイノベーションである。
ところで、ボクたちの会社には二つの原則がある。
ネットメディアを視野に入れた仕事もしているが、実態としてはテレビ番組制作がボクたちの主たる仕事であり、中でもドキュメンタリーに軸足を置くことが原則のひとつである。
これは創業以来30余年続けて来たことであり今後も変わることはない。
そしてこの長年積み重ねて来たドキュメンタリー制作がボクたちの大きな武器であり、近い将来、ネットメディアでその力を発揮することが出来ると考えている。
もうひとつはスタッフの自主管理である。
会社組織である以上、ルールはあるが、規則や約束ごとは可能な限り少なくしている。
本当にこの仕事をしたい人たちが集まり、自由気ままに活躍できる場所にしたいと願っている。
ひとりひとりの個性や特徴を存分に生かせる集団でありたい。
数少ない約束ごとは必ず守るが、仕事については自分で律する自主管理、責任を周囲の所為にしない自立の精神を持つ個々の集団だ。
このふたつがボクたちの会社の原則だが、今後もこれを踏まえて価値あるソフトを産み出して行きたい。
そのために、遠回りかもしれないが、いま一度原点に立ち戻ってボクたちの仕事の意味やあり方を見つめ直すことが役立つかもしれない。
なぜこの仕事を選んだのか、何を伝えたいと考えているのか、何を伝えなければならないのか、それをどのように伝えるのかを改めて自らに問い直す作業だ。
何より企画がボクたちの命である。
価値ある企画を産み出すために一番大切なのはしっかりとした世界観を持つことである。
企画力とは、いまという時代を観察し、時代を捉える力である。
そして森羅万象それぞれの事象からその奥に潜む真相を的確に映像と言葉にしていくこと、この誠実な姿勢があれば自ずと価値あるソフトを発信できると信じている。
そしてそのソフトは必ずテレビ、ネットなどメディアを問わす人びとの心を揺さぶる力と魅力を持つ筈である。
これは、これまでずっと語り継がれてきたドキュメンタリー制作の基本なのだ。
いま一度、これら基本に立ち返り、今後の制作活動を継続して行きたいと思う。
この春4月には6名の新入社員がスタッフに加わってくれる。
ベテラン、中堅、そしてフレッシュな若者たちと共に力を合わせて価値あるソフトの制作にチャレンジしたいと思っている。
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