FC2ブログ
ホーム   »  未分類  »  働き方の難しい時代

働き方の難しい時代

何とも働き難い時代になったものである。

国はいま、残業時間ゼロ社会の実現を本気で目指している。
強力な国策としての位置づけである。

残業ゼロ政策には、労働者の権利を守ることが視野に無いとは言わないが、本当の狙いのひとつは、働き方改革の基本となる生産性の向上にある。

簡単に言えば、ひとつの仕事を仕上げるのに大量の時間を使うな、ということだ。
仕事は出来るだけ効率的に早く仕上げて、残った時間を別の仕事に当てれば、同じ時間量で二つ、三つの仕事が可能となり、生産性が上がるだろう、との理屈である。

そして、もうひとつ大きな目的がある。
それは、前述した効率よく生産性を上げると共に、残業を無くせば会社は残業に対する経費を削減できる。
人件費は勿論の事、電気、水道料に至るまで諸々の経費節約になる。

これら二つの大きな目的は言うまでも無く、投資家つまり株主の利益を目指したものであることは明らかである。
一般的には会社とは、その会社に投資している株主の利益のために存在するので、人件費を含めて会社の経費を減らせば減らすほど、株主たちの利益は高まる。
残業ゼロはその目的を達するための最も手近で確実な方法と考えられる。

これはわが国独自の発案ではなく、ヨーロッパの考えを真似たものだ。
アメリカも形は異なるが、同様の考えの下に労働政策が行われている。

しかし、西欧諸国と肩を並べるために日本が新たに取り入れた残業ゼロの国策は、ボクたちのような職種の現場に、とても過酷な要求を突き付けることになる。

もっとも、小なりとは言えども、ボクもわが社の株主で同時に会社の経営者のはしくれである。
本来はこの国策に乗って、都合よく会社の利益を図るべき立場にある。

しかし、ボクは先のブログ「お金というふしぎなモノ」に書いたように、利益を上げることが目的ではなく、貧しくても自分たちが納得のいく番組を作りたいと願って会社経営を続けている。
会社設立や働き方やそれに必要な時間に対する根本的な考え方が異なる。
だからこの政策はボクたちが通常の仕事をしていく上で、大きな障害として立ちはだかる。
恐らく他の業種の多くの企業現場でもその対応のために混乱を生じていると思われる。

かつては、日本人は働き者と評価され、労働が美徳であり、働き者は称讃されたものだが、それも今は昔の話となった。
国からの指導、勧告が厳しくなり、会社は社員に対して残業を無くす努力をしなくてはならない。
これが法律による選択の余地のない命令だ。

ボクたちの会社は専門業務型裁量労働制が適用されているので、基本的には長い残業に対する対価は社員に支払わなくても許されることになっている。
つまり残業料といったお金が問題では無く、それでは何かと云えば、現在は長時間労働による社員の健康管理に焦点が当てられ、それが問題視される。
つまり、残業料さえ払えば良いのでしょう、とのこれまでの企業の在り方が否定されているのだ。

その典型例が刑事事件にまで発展した電通の新入女子社員の自殺問題だ。
その自殺の原因の真相についてボクは詳しくは知らないが、残業による過労が原因のひとつと認定されている。
もしかすると電通にも非はあるのだろうが、見方によれば働き方改革、残業ゼロ政策の見せしめにされたとの感もある。

極端に言えば、会社は社員に働くな、と言わなければならなくなる。
これまでは、骨身を削って規定時間以上働いていたスタッフは社員の模範であったが、今や会社を危うくする迷惑な不良社員ということになり、同時に規定の時間内で仕事を仕上げる能力に欠けた働き手との烙印が押されることになる。
それはどう考えても変だし、道理に合わないとは思う。
しかし、それが現実の国の考え方である。

また、これらの規制の対象者は社員だけで、個人事業主やフリーとして働いている人たちには適用されないので、会社としては出来るだけ社員を少なくし、フリー契約の方向で仕事をして行かざるを得なくなる。
国は社員化を推し進める一方で、社員化を難しくさせる矛盾した政策を実施しているように見える。
つまり、国は働く者の保障を重んじる社員化よりも残業ゼロ政策の方を重要視していることが分かる。

知り合いの某テレビ局のHプロデューサーが、わざわざ相談に見えた。
Hさんは他人から見れば異常と思えるほどに番組作りに熱心で、寝る間も惜しんで働き続けている。
Hさんにとっては、この仕事が自分の天職であり使命であると考えている。
まさに番組を作るために生まれてきたような典型的人物だが、番組作りについては妥協を許さないので当然のことながら周囲とも摩擦も多い。
ボクが現役でディレクターをしていた当時には、こういった職人気質タイプの作り手もそれほど珍しくなかったが、近頃では少なくなった。

相談というのは、実は会社から担当番組のプロデューサーを外され、何も仕事が出来ない状態になっている、というものだった。
それまでずっと1ヶ月の残業が300時間~400時間がザラで、上司から残業しないように固く注意されていたのだが、それでは満足のいく仕事ができないので、その注意を無視した末の結果だったようである。
納得いかないのだが、どうすれば良いのだろうか、というものだった。

すでに数年前から、多くの金融機関では、出社と退社時間の制限があり、仕事をしたくても会社に入れないし、居ることも出来ない、との話を当事者から聞いていた。
コンピューターの使用時間にも制限があり、時間外の使用については上司からの厳重注意を受ける、とも聞いた。

またある会社では、部長クラスの役職が退社時間が来ると、部員全員を退社させ、それを見届けて部長が退社するのだとの話も聞いている。
各企業で残業ゼロへの取り組みがそれぞれの形で行われている。
勿論、祝祭日は出社禁止で、会社に入ることが出来なくなっている。

「それでは仕事をどのように処理しているのですか」
と聞くと
「家でやるか、外でやることになります」
と判を押したようにみんな同じ答が返ってきた。
ひと頃話題にもなった、いわゆるサービス残業である。
多くの企業の働き手はそうした方法で仕事をこなすことを余儀なくされているのが実態だ。
そうしなければ、自分も組織で生き残れないし、会社自体の存続も危うくさせるからだ。

またテレビ局なども時間外労働を行わなくても済むシフトの組み方をするなどの取り組みを始めている。
その所為で、これまでは1日で終えることが出来た作業が2日間に分けて行うので、余分な時間と経費の負担でプロダクションとしては時間とお金の両面での負担が大きくなっている。

これらはほんの一例だが、ボクたちにとってのプラス面は今の所何も見出すことはできない。
ボクたちの会社も残業ゼロ政策への真剣な取り組みが、当然ながら関係省庁から強く求められており、本気で対応しなければならない。
この政策と現実の板挟みでの苦悩は避けられないが、現在わが社でも弁護士と共に政策にかなうより良い方策を模索しているところである。

      「働けば 働くほどに 首絞める」


にほんブログ村 テレビブログ ドキュメンタリー番組へ にほんブログ村 テレビブログ プロデューサー・ディレクターへ 人気ブログランキングへ

ブログランキングに参加しています。クリックをお願いします。






関連記事
Comment
「ピンチを乗り越える」
「ピンチを乗り越える」

小泉政権の時に「日本は、アメリカに比べて、人口当たりの弁護士の数が少ない」と、弁護士を大増産しました。
その結果、巷には「年収100万円以下」の弁護士がゴロゴロいるようになりました。
原因は、アメリカのロイヤーには、弁護士、会計士、税理士などなどが含まれていることを知らなかったのです。

K医大のT准教授は、脳外科から付属病院総合研修センター副センター長をしています。
オルタスジャパンのスタッフも同席していましたが、T准教授の月収が20万円と聞いて、仰け反って驚いていました。
T准教授は、テレビや映画、漫画の医療関係の場面の監修をしていることで有名ですが、名の通った医大の准教授の月収の低さは尋常ではありません。
このK医大とS医大の二大学以外の医大は、全部、赤字決算です。

日本は、どこかが狂っているのでしょう。

「狂った頭脳からは、狂ったことしか出てこない。」
「働き方改革」も、それでしょう。

「狂った」渦中にあっても、貫徹することがたった一つだけあります。
「より強い者がより弱い者の弱さを負う」配慮の一事です。
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

馬鹿社長

Author:馬鹿社長
【小田昭太郎】
株式会社オルタスジャパン代表取締役

★ホームページ★

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR