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年が明けたら七変化

株主総会も無事に終え、会社恒例の忘年会も賑やかに楽しみ、年賀状書きもあと少しを残して28日仕事納めの日を迎えた。

一年の中でも12月の、時間の過ぎる速さは特別に群を抜いている。
昔からこの月が師走と言われていることを今さらながら実感する。

会社の一年の収支は、お蔭さまで僅かながらも法人税を納めることができた。
その意味では、まずまずの一年だった。

ただ敬愛する作家で脚本家の早坂暁さんの突然の死は、悲しいと言うには辛い出来事だった。
百数十人集まっていただいた会社の忘年会の冒頭の乾杯の挨拶で、わが社の専務取締役の吉岡攻が
「本来ならば、毎年ここに来られている筈の早坂暁さんの姿を見ることができないのは寂しい」
と語り哀悼の辞を述べたが、乾杯とも献杯ともつかない杯を皆で交わした。

この忘年会の翌日に早坂さんのお通夜があり、その翌日に告別式が行われ、妻と参列した。
すでに生前葬を済ませておられたので、告別式はごく少人数で行われた。

早坂さんが納められた棺を取り巻く十数人の中に控えめで、目立たないように配慮している小柄で美しい女性がいた。
妻は小声でボクに「吉永小百合さんね」とささやいた。

人前で涙を流す姿を見られるのは潔しとはしないのだが、これまでのことが色々と思い出され、どうしても溢れる涙を我慢することは出来なかった。
父親の葬儀でも流さなかった涙だった。
ボクも歳をとったのだろうか。

先生のひとつのお骨を白い箸で妻と挟んで骨壺に納めた。
「これが喉仏です」と火葬場の職員は慣れたしゃべり方で説明した。
何度となく見てきた喉仏のお骨だが、本当に人が両手を合わせて合掌しているように見える。

それまで顔かたちがあった存在が、小一時間でお骨だけになってしまう衝撃は何度体験しても慣れるということはない。
「人が怒ったり、争ったりすることが虚しいことに思えるわね」と妻は言った。
「長生きしてね」

斎場を後にしたボクたちは、早坂さんが倒れて息を引き取られたという場所に向かった。
亡くなられた当日、すき焼きを食べたい、と先生夫妻が向かわれたお店は、斎場からほど近いオペラシティーの地下にあった。

警察署の現場検証の防犯カメラに映っていた写真にならって、先生たちが歩いたであろう道を通り、写真にあったエスカレーターに乗った。
下りると広場があり、そこに雪をイメージした10メートルほどの大きなクリスマスツリーがあった。
ああ、この日はちょうどクリスマスイブだった。
写真の中で先生が両手を腰に回し、何かを仰ぎ見ていたのはこのクリスマスツリーだったのか。
その直後に先生は倒れそのまま帰らぬ人となられた。

その先に、先生が食べたいと思っていたすき焼きのお店があり、ショーウインドウにそのすき焼きが置かれていた。
先生のささやかな望みは果たせなかった、食べさせてあげたかったと思った。

そう云えば、もう1ヶ月ほど前になるが会社に訪ねて来られ、帰り際に「来週、お好きな中華を食べましょう」と約束したのだったが、それを果たせなかったのが悔やまれる。

それに、先生から多くの宿題も預ったままになっている。
余りにも沢山あるのだが、中でも夏目漱石の小説「門」に登場する公案「父母未生以前本来の面目を問う」を映像化しようという難題ある。

浅薄に云えば、お前の父や母がまだ生まれる以前のお前はいったい何者だったのか、という意味になろうか。
画家のゴーギャンは、「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」という画を描いているが、恐らく同じ意味で、それをドキュメンタリーにしよう、というのである。

ボクたちは、それを日本人論として捉え、真剣に取り組んでそれなりの企画書を作ったが、未だにテレビ局に採択されていない。
禅宗の公案の映像化は余程の知恵を必要とする。
永遠のテーマになりそうだ。

先生がお元気な間に、もっと先生から知恵を盗んでおけば良かった、と悔やむばかりである。
しかし、少なくとも、ボクがこの世から消え去るまで、早坂暁さんは生き続けることになる。
ボクのような人たちが大勢いらっしゃるだろうから、多くの人たちの中で先生は生き続けるに違いない。

そんなこんなで、刻一刻と時間が過ぎ去っていく。
そして、あっという間の1年となった。

ボクを含めて、日常生活に流される時間の中で自らの死を実感することは難しい。
ずっと生き続けることなどできないことは頭では分かってはいても、現実感を持つことができない。
また、そうでなければ人は到底生きては行けないのだろうが、それ故の愚かさも同時に手放すことが出来ないでいる。
人とは実に情けない生き物だ。
さて、また来年も同じように、平凡で馬鹿な人生の一コマを生きることにしよう。

今年は正月休みがちょっと長いので、ブログもその間休ませていただく。
それではみなさんも良いお年をお迎え下さいますように。

     「どう生きる 年が明けたら 七変化」


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