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老兵は死なず……歌に生きる

石橋幸という歌手がいる。
かつて作家の中上健次が
「石橋幸は、ロシアの歌をロシア語で歌い、あまりに深くロシアの人と土地に共振れする」
と評した。

11月6日、新宿の紀伊國屋ホールで彼女の「僕の呼ぶ声~ロシア・アウトカーストの唄たち~」と題する20回目のコンサートがあり、聞きに行った。
収容人数418人の紀伊國屋ホールの広い会場が超満員だったのには驚いた。

彼女の歌を聞くのは何年振りだろうか。
ボクが彼女と出会ったのは30年近く前で、まだバブルの頃だった。
日本国中の土地が見る間に値上がりして土地神話が当たり前のように信じられていた時代である。

各地でさまざまな形での都市開発が行われたが、新宿の歌舞伎町の一角に位置するゴールデン街と称される地域もその対象とされた。
2000坪ほどのゴールデン街には、木造の長屋が密集し、200軒ほどの飲み屋が立ち並んでいた。
かつては青線と呼ばれる売春地帯だった地域である。

土地の値上がりを見込んで、不動産会社などがコールデン街の土地を次々に買い上げて行く、いわゆる「地上げ」という現象が起きていた。
歯が抜けるように、閉店する飲み屋が目立ち始めていた。
そんな状況を取材するためにボクはゴールデン街のお店を訪ね歩いたが、その時に知り合ったひとりが、石橋幸さんだった。

彼女は「ガルガンチュア」という名前の3坪ほどのスナックをやっている。
そのお店はジャーナリストの立花隆さんから譲り受けたと聞いた。

お店が次々に閉店して街そのものが寂びれていくことに危機感を感じていた街の人たちと話している時に「餅つき大会をやって元気でもつけない?」と提案したら「やろう!」ということになり、盛大に皆で餅つきをして道行く人たちに振る舞った。
石橋さんも熱心な賛同者のひとりだった。
もち米はボクが提供して、ゴールデン街の多くの有志たちが参加した。

こうして「ゴールデン街を守る会」が出来て、4~5年餅つき大会を行ったが、そのうちバブルが崩壊して、地上げ騒ぎも収まり、守る会も自然消滅することになる。
この時期にボクは頻繁にゴールデン街で飲み歩いていたのだったが、石橋幸さんのお店に行くことが多く、親しくなった。

彼女は早稲田大学の露文科で学び、ソ連の首都モスクワの大学に語学研修で訪れた。
ここで、ロシア革命の詳細を知る。
ロシア革命とは、ひと口で云えば、今から丁度100年前、世界で初めての社会主義国家を誕生させた革命である。

彼女はロシアに触れてその政治や文化に興味を持ち、好きだった歌への旅が始まる。
それは、人びとから、すでに忘れ去られている歌の探索の旅だった。
ロシア民謡、シャンソンを初めとして、囚人やジプシーの俗謡などを多数掘り起こした。
それらの歌を彼女はずっと歌い続けて来ている。
2010年にはモスクワのクレムリンで公演、2013年にはハバロフスクで野外コンサートも行っている。

紀伊國屋ホールでのコンサートは、今回で20年目となるものだった。
ここで20曲ほどを披露したが、それぞれの歌詞が日本語でスクリーンに投映されるので歌の意味を理解できる。
ロシア語で歌う彼女の歌は、メロディーもさることながら、歌詞に大きな意味を持つ。

舞台で石橋幸さんはこう語った。
「わたしは73歳になります。しわくちゃの婆さんだけれども、80歳になったら韓国に行って美容整形を受けて、頬骨を削り、つるんとした美女に生まれ変わりメジャーデビューするつもりです。どうぞご期待下さいね」

世の中、働き方改革などで老人たちの雇用年齢が延びていくとは云え、大方の企業では60歳で定年を迎え、給料を大幅にカットされて65歳で組織を去るのが現状である。
しかし実際には、まだまだ働ける元気な老人たちは多い。

石橋幸さんはそれらの老人たちを励ますかのように、舞台狭しと動き回り、高音も平気で歌い上げる若々しい姿を会場の人たちに惜しげなく見せた。

石橋幸さんのゴールデン街のお店ガルガンチュアにも2年ほどご無沙汰している。
明日にでも改めて彼女の顔を見に行くことにしよう。

      「老いてなお 好きな道行く 若さかな」


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