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大きな声では言えないお話

少しばかりお恥ずかしい話をする。

ボクたちの会社は9月決算を行っている。
説明するまでも無いことだが、毎年、10月から翌年9月までがボクたちの1年で、この12ヶ月間の収支で決算を行う。

現在は8月の半ば過ぎなので、間もなく〆の期限である9月が来る。
売上高は、ほぼ前期同様で横ばい状態なので、それはそれでまずまずなのだが、利益が減る見通しである。
これは頭の痛い問題だ。

本来会社は増収増益を目指す。
収入は前期並みでも増益ならば良いのだが減益はいけない。
収支は赤字になることは無い見通しだが、ギリギリのところにあるので、お金の使い方については少しばかり引き締めて、気を使う状態が続いている。

会社設立以来、これまで30回ほどの決算をしてきているが、最近ではお蔭さまで黒字の決算が出来ている。
そして、得た利益はスタッフに分配することを原則とし、実行してきた。

先だって、大手銀行の営業担当者が株式上場の話を勧めに来た際に、会社が赤字決算をした場合の銀行の厳しい対応についての話を聞いた。

赤字額が1千万円であろうと1円であろうと、赤字は赤字であること、同様に、1円であろうと黒字は黒字であるとの判断を銀行はする。
そして、それまで黒字を出していた会社が一度赤字決算を行うと、途端にその対応は変わり、例えば、銀行からの借り入れ等についても基準は厳しくなり、同時にその利息も高利になるという。
その後黒字を出しても、一度赤字を出した会社が銀行の信用を取り戻すのに最低5年はかかるとの話も聞いた。

それまで、少しくらいの赤字ならば良いだろう、位に決算について軽く考えていたのだったが、世の中はそんなに甘くはないことを改めて知ったのだった。
銀行マンの友人にその話をすると、お前は相変わらず呑気な奴だなあ、と笑われた。

そう云えば、会社を立ち上げてからしばらくの間は帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業信用調査会社からの調査がしばしば入ったことを思い出す。
調査を依頼した会社の名前は明かしてくれなかったが、テレビ局だったのかどこかの企業だったのか、調査会社はわざわざ会社まで訪ねて調べに来たものだった。
今では、毎年一度、決算期の電話での確認だけで済んでいる。

それでも、テレビ局によっては、大型のレギュラー番組企画を提出した際には、現在でも決算書の添付を別途要求されることがある。
本当に年間通じて制作を続けるだけの会社としての体力があるかを確かめられる訳だ。

税務署に提出する厚さ1センチに満たない決算書類を見れば、その会社の財務内容のすべてが分かる。
今更ではないが、決算内容とは会社にとっては、良くも悪くも、とても重要な意味を持つ。

その意味では数字がすべての判断基準となり、いくら評判の良い番組を制作したのだから、などと言ってみたところで銀行などの金融筋にとっては評価の対象とはならず、何の役にも立たない。
プロデューサーやディレクターの制作者としての誇りなどは数字の前では一蹴される厳しい現実がある。

今期は売上高に関しては前年並みだったにも拘らず、収入が伸び悩んだのには大きくは二つの原因がある。
そのひとつは、価格破壊とも言えるテレビ局による制作費の削減に因むものである。
特に、民放のBS番組などは信じられない低予算の番組が多い。

直接的な原因としては、わが社の制作陣がそれに見合った制作対応が出来なかったということである。
例え低予算であってもテレビ局のプロデューサーは番組のクオリティーを求めてくるので、番組の質は落とせない。

例えて言うならば、特上の天丼を並みの天丼にすると、明らかに質は落ちるので苦情が来る。
しかし、特上の天丼を作るだけのお金はない。
この矛盾をどう解決するかの知恵が求められる。

つまり、簡単に言うと、質を落とすのではなくて質を変える知恵と工夫が求められる。
これまでの特上の天丼を例えば、特上のサラダにすることによって、制作費に見合った特上の料理を提供できる訳である。
質の変化への頭の切り替えが求められる時代になった。
この対応が出来ていないことが一つ目の理由である。

また、民放BS局に限らず、いくら工夫しても赤字が出てしまう番組制作上の構造的な理由による赤字番組もある。
それを解決するためにはテレビ局側の金銭的、人的協力を必要とするが、それが叶えられないケースもある。

そういうレギュラー番組については、泣く泣く降板させてもらった。
レギュラー番組を自ら捨て去ることは、安定収入を捨てることに等しいので本来ならば有り得ないのだが、制作すればするほど赤字が増えるのでは致し方ない。
今年の4月から、そんな番組をひとつ整理した。
4年以上続けて来ていたわが社にとって思い入れのある番組だったのだが血を吐く思いで決断した。

もうひとつは、プロデューサーの予算管理能力の欠如である。
これは資質と責任感の問題である。
少ない予算でも、立派に仕事をし終えるプロデューサーもいる。

適応能力の欠如した人材の整理もやむを得ない厳しい状況も生じている。
情だけでは対処しきれない時代の流れがある。
これらの諸問題を踏まえて、それなりの大ナタを振るわざるを得ない局面もあった。
意識や人事を含めて改革も進んでいるので来期を期したいと考えている。

そんな事情で、今期は減収の見込みにあり、例年7月末に支給している夏季一時金の支給を見合わせた。
今の所、9月末の様子を見て、決算賞与という形で10月初旬に時期をずらせて支給するつもりでいるが、果たしてどうなるか。

この間の事情はすでにスタッフ全員に伝えた。
経営の責任者として忸怩たるものがあり、頑張っているスタッフに対して申し訳ない思いと悔しさで一杯である。

そんな気持ちでいる時に、人づてにあるスタッフの言葉が耳に入った。
「一時金が支給されないことは残念だが、それは自分たちの責任だ。自分たちの働きが悪いからだ。赤字を出さないように工夫してがんばりたいと思う」

そう語ったのは40代前半の中堅のプロデューサーだったことを、ボクにその話を伝えてくれた別のスタッフから聞いた。
こういう言葉を聞くことが出来るとは実は想像もしていなかった。

夏季一時金を予定通りには出せないことを、申し訳ない思いでスタッフたちに伝えた時も、スタッフの間に特別の動揺も感じられなかったし、それについての不満の声も直接、間接にボクの耳には届いてはいない。

しかし、その中堅スタッフの言葉は、頼もしく、月並みな表現になるがとても嬉しかった。
これ以上の励ましはなかった。
これまで、それなりの苦労をして会社をやってきて良かった、と心の底から思った。
まるでボクへの臨時ボーナスだった。

夏季一時金の支給の遅延を会社全体の問題として捉え、さらにそれを自らの責任として考えることの出来るスタッフは決して多くはないだろう。
しかし、こういう人材が一人でもいてくれる限り、ボクたちの会社の将来は安泰である。

       「がんばるぜ まだがんばれる あと少し」


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