FC2ブログ
ホーム   »  未分類  »  ニッポン喫煙事情

ニッポン喫煙事情

毎度ながらの与太話である。

日曜日の午後はたいてい新宿をうろついている。
ボクの住む新宿内藤町から、新宿御苑沿いのちょっと風情のある通りを抜けて15分も歩けば新宿三丁目の伊勢丹デパートがある。

途中のオープンテラスのある喫茶店で360円のコーヒーを頼み、煙草を吸いながら一時間ほど過ごす。
妻はボクの知る限り、日本一の嫌煙派で、4~5本の煙草を吸っている間に必ず一度か二度は、禁煙しろとの注文をつける。
分かったよ、と応えまた一服吸う。
妻は心の底から嫌だ、という顔をしてボクを見ている。

近頃では煙草の吸える場所が極端に制限されているので、愛煙家にとってはとても窮屈な世の中になった。
残りの人生もそれほど多くはないと云うのに、これほど好きな煙草くらい自由に吸わせてよ、との思いは強いが、そんな主張も虚しく空を切る時代になった。

2020年の東京オリンピックに備えて、禁煙運動はますますその勢いを強めている。
現在では病院を初め、お役所など多くの公的な建物での禁煙が進む中で、たばこ事業法の下、全国のたばこ農家等々を管轄する財務省にはさすがに喫煙スペースがあるらしい。

たばこの一年間の総売り上げは約3兆9千億円で、その税収は約2兆3千億円だと云うから、喫煙家は多額の税金を払うためにケムリを吸っている勘定になる。

最近、スターバックスはオープンテラスでも禁煙になったし、コージーコーナーもこの7月から全面禁煙になった。
そういうお店がどんどん増えている。

赤坂の会社の近くにある行きつけの喫茶店は、未だにゆで卵の付いたモーニングサービスを続けている昔ながらのお店だが、ママが「良かったらお名前を書いて下さいな」という署名用紙を見たら、なんと禁煙反対の署名で、時代に逆行している少数派が健在かと、とても嬉しく喜んで署名した。
「うちに来られるお客さんたちは煙草のお好きな方が多いですからね」とママさんは大真面目な顔つきである。

このママさんは二代目で、先代のおばあちゃんとはケムリをくゆらせながら何かと話したものである。
今ではほとんど居なくなった昔からの赤坂の地の人で、もとは雑貨屋さんだったらしい。

ある冬におばあちゃんは「わたしの娘時代のことですが、今日のように雪の降る中を沢山の兵隊さんたちが血相を変えて通り過ぎて行くのを見ましたよ」などとしみじみとした調子で昨日の出来事のように昔話をしたものだ。
「それが2・26事件だったんですね」
ボクたちが歴史の教科書でも習った2・26事件は昭和11年に起きた有名なクーデター未遂事件である。

ボクがコーヒーを飲んで帰ろうとすると「もうお帰りになるんですか?もっとゆっくりして行って下さいよ」などと言ってくれた、そのおばあちゃんも何年か前に亡くなられたが、そんな人情味のある喫茶店である。
この店からも煙草が追い出される日も遠くは無いと思うと実に切ない。

休みの日に、家でくつろぎながら録画した往年の名画を視ていると必ずと言って良いほど煙草のシーンが登場する。
それが実に旨そうで、ついそれに誘われてボクも吸いたくなるが、嫌煙家の妻の手前、わざわざ映画を中断してベランダに出なければならない。

ベランダには喫煙用の椅子と灰皿を用意してある。
風のある戸外での煙草は不味いものだ。
それに陽が落ちてからの暗闇の中ではもっと不味い。
あの何とも形容しがたい煙の色とくねるような形を楽しむことが出来ないのでは、煙草の魅力は半減以下となる。

自分の家でありながら、こればかりは自由にならないのは実に悲しいことである。
ボクの住んでいるマンションと目と鼻の先ほどの所でオリンピック競技場が建設中だ。
もう少しすれば、ベランダでの喫煙も法律で禁じられることになるかもしれない、と不安に怯えながら一服しているのでちっともリラックスできない。
ああ、何ということだ。

昨日も会社の近くのお店で妻と昼食を終えた後、ボクが一服吹かすのを見て「もしわたしがガンになったら煙草を止める?」と聞く。
ボクはそれに応えず黙って吹かしていると「それでも止めないの?わたしを愛してないのね」と睨む。
元、中国の婦人警官をしていただけあって、その眼光は鋭い。

そうはおっしゃいますけれどね、確かにケムリが不愉快なことは充分に理解できるけれど、煙草とガンの因果関係を明確に証明した医学的根拠は無いとも聞いているし、ましてや副流煙とやらに於いておや、でね、それりももっと身体に悪いことは他にもいっぱいあるんじゃないの、それほどまでに煙草に対して親の仇のように目くじらを立てることもないんじゃないの?などということは決して口にはしない。

そして「お前さんに限ってガンにはならないから大丈夫だよ」とボクは笑顔を投げる。
煙草以外のことでのもめごとは一切無いのだが、この件に限ってだけは敵はどこまでも強硬路線を変更する気配を見せない。

これまで自由気ままに生きて来て、自分の自由を束縛するどんなことにも、たとえ屁理屈を立てても抵抗してきたのだが、こと煙草の件についてだけは、妻が今の路線を歩む限りは表立っての喫煙擁護の論陣を張るつもりは全く無い。

ただ黙々と静かに煙草を吹かすだけである。
  
      「愛煙家 ただモクモクと モクモクと」


にほんブログ村 テレビブログ ドキュメンタリー番組へ にほんブログ村 テレビブログ プロデューサー・ディレクターへ 人気ブログランキングへ

ブログランキングに参加しています。クリックをお願いします。


関連記事
Comment
「煙草と悪魔」
「煙草と悪魔」という芥川龍之介の作品があります。
悪魔は、フランシスコ・ザビエルに仕える修道士に化けて日本に来て、煙草を栽培し、たちまち日本全土を席巻してしまいますが、ザビエルのキリスト教布教は完全に失敗した、という話です。

芥川はヘビースモーカーでした。「煙草は一種類ではなく、二~三種類常にのむ」と言い、芥川の主治医は「彼の作品数と喫煙本数は比例している」と言ったほどですから、芥川が、煙草を悪魔と思っていたわけではありません。

作品をお読みになる方は、下記から。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/163_15142.html
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

馬鹿社長

Author:馬鹿社長
【小田昭太郎】
株式会社オルタスジャパン代表取締役

★ホームページ★

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR