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差別に苦しむ青年の訴え

ある青年からの突然の電話を受けた。

30歳代前半だと云うその青年は被差別部落の出身者で、これまでさまざまな形での差別を受け苦しんできたと訴え、日本社会に対する不満を募らせていた。
その青年は、社会の抱えている矛盾を鋭く突いたが、それらはまんざら的外れでもなく、確かにその青年の云う通りだと頷ける内容でもあった。

何をやっても上手く行かず、こんな日本から脱出して外国に行こうかとも思うが、それもままならない、どうすれば良いのか、という訴えだった。
どうしてボクに電話してきたかの理由は聞いていないので分からない。

ところで、被差別部落とはどんな存在なのか。
上杉聰関西大学講師の「部落の起源と天皇制」と題した講演記録を以下に引用させていただく。

「914年の『意見封事十二箇条』を見ると、為政者が作っている社会の秩序から外れて、税金などを納めず、河原などに住んでいる貧しい元農民などを差別する姿が出てきます。
彼らが税を納めず、河原で楽しげに生活していたら困るので、(為政者が)一般民衆にこの人たちへの差別を呼びかけつつ、京都の町の清掃をさせたというのがキヨメの発生だと思います。

一般民衆は、彼らは税金も払わないケガれた人たちで、町をキヨメてくれる人たちであるという認識を持ちます。
人そのものに対する差別、人がケガレているという感覚です。

さらに、都の外に仮住まいして、町の中に入ってきては物乞いをするケガレた人たちを町の外へ追い出すために、民衆は、彼らを京都の入り口の辻々に立たせました。
流民を使って流民を追い出すというやり方です。
これが治安管理、警察の仕事です。
こうした清掃機能と警察機能を持った人たちを為政者がつくったという、極めて権力的な作用が部落差別の発生だと思います」

上杉氏によると被差別部落と天皇制とは密接な関係があると説く。
要約すると以下のような内容になる。

これまで、「非人」や「穢多」と呼ばれていた人たちは士農工商の最底辺に位置する人たちと一般的には思われてきたが、資料によれば「士農工商の外」と記述されている。

「非人」や「穢多」は、人に非ず、穢れが多い、人たちであり、「人間の中にいてはならない」「人間の中に加えない」という意味である。
事実、京都、大阪、江戸などの被差別部落はお堀によって隔離されていた。被差別部落を覆い隠し、部落民と一般の人たちが接したり、交際したり出来ないようにしていた。
日本には古代から奴婢や下人と称する奴隷が存在し、売買されてきたが、それら売買される人々とは別に被差別部落民が存在した。

ところで、こういう被差別部落ができたのはいつからなのか。

1015年の「小右記」、1016年の「左経記」などの資料によれば、天皇をケガレから守るために、御所の近くで、人間や動物の死体が放置されているとして、現在の警察に当たる検非違使に死体処理を命じた。
検非違使はその処理を河原人、つまり後の穢多と呼ばれる人たちにやらせていたと記されている。

そういう人たちの集落が被差別部落で、彼らは社会の外に完全に放逐されるのでもなく、半分社会に身を置いて、しかし、社会の中に本当に入ることも出来ない、微妙な位置に置かれていた。
天皇家と天皇の都をいかにケガレから守るかということで、被差別部落は設定されたのである。

鎌倉時代中期までの地図を見ると、京都や奈良の周辺にしか「非人」の集落はない。
つまり、日本で権力の集中していた場所、すなわち天皇のいた京都や奈良でキヨメとして被差別部落が発生した証拠である。
そしてやがてその形が全国に広まっていくことになる。

被差別部落民の仕事は、清掃と警察、治安の管理である。
死のケガレと罪のケガレを取り払う仕事をする者として、検非違使のもとに設定された。

その設定に検非違使が関わっている以上、彼らを管理、統率した天皇や藤原氏などの権力者の意向が明確に反映していたと考えられる。

以上が上杉氏の被差別部落の起源に関する講演の要約の一部だが、被差別部落に対する差別は、身分の階級制と共に天皇制という権力の政治構造の下で作られ、1000年以上の長きにわたって日本の歴史の中で連綿と続いてきたものだ。

1965年の同和対策審議会の答申によれば、日本全国に被差別部落が4160あり、その人口は111万人を越える。
つまり、太平洋戦争での敗戦で天皇制が廃止された後も、現在に至るまで負の遺産として差別に苦しむ多くの人たちがいる訳である。

1982年のある調査では近畿地方だけで、1004の被差別部落が存在するとの報告があるようだが、ボクの生まれ育った大阪府堺市でも多く存在し、ボクが小学校に上がる頃にはその存在と差別の何であるかをおぼろげながらもすでに知っていた。

そして大人たちの日常の会話から、結婚や就職にまつわる沢山の悲劇が起きていることも耳で知った。
当時の大人たちが、差別の話をする時は、例外なくヒソヒソと小声で秘密っぽく話していたことを思い出す。

そして在日朝鮮人も被差別部落と同様に差別の対象であることも同時に知った。

母方の祖母が「恋愛結婚は許さないからね。お前の嫁はワシが決める」と幼いボクにしばしば言い聞かせた背景に、被差別部落や在日韓国朝鮮人の存在があることも知っていた。

こういう風土にボクはどうしても馴染めないでいた。
天邪鬼たったボクは、そんな子供の頃から、絶対に恋愛結婚をするぞ、と密かに決めていたのだった。

ボクは二度目の結婚で朝鮮民族と結婚し、図らずも祖母の教えに背くことになったのだが、これは別にそんな、幼い頃の反発からではなく、好きになった人がたまたま朝鮮民族であっただけのことに過ぎない。
惚れた腫れたに民族や国境は関係ない。

しかし、年老いてからのこの結婚に対する故郷の反発と軽蔑はボクの予想を遥かに越えたものだった。
朝鮮人と被差別部落民とは同列の差別対象者であることもまた、改めて身を持って実感したのである。

被差別部落や朝鮮人への差別は権力者が作り出した官制の差別である。
そして、過去にそういった差別構造の歴史があったとしても、現在では、差別する方もまた差別される側も、その双方共に差別は何の意味も持たず、また根拠もない存在である。
まだ、そういう価値観の下に生き続けていることの方が不自然だと思えるのだが、現実はそうでないことがとても不思議である。

電話で、日頃抱えている悩みや憤懣を投げかけてきた青年にボクはこう応えた。

「ボクには、あなたの悩みを解決する術はない。
しかし、ボクもあなたと同じように、形は異なってはいても、社会の矛盾や理不尽にまみれながら必死で生きている。
自分よりも大きな力を持つ組織に押し潰されたり、理屈に合わないことに涙するようなことも日常的に起きる。
しかし、めげず、諦めず、弱音を吐かずにどこまでも戦い続けるしかないと考えている。
世の中とは、もともと、そういう理不尽なモノだとの認識の上に立って、対応するしかないのだと。
しかし、どこまでも闘い続けるぞと。
冷たいようだが、あなたの悩みはあなたが解決するしかないと思う」

それまで饒舌だった電話の青年は、しばらく無言のままだった。
そして間を置いた後、自分の話を聞いてくれただけでも嬉しかった、と云った。
30分足らずとは云え、ボクも真剣に聞き、真剣に話した。

どういう経緯で差別が作られ、それを伝承継続させるためにどのように人々の心を利用し、どういう形で差別が行われてきたのかの概要をボクたちはすでに知っている。

それは言わば権力者たちが作った巧みな罠である。
多くの人々の心をくすぐる危険な罠である。

ボクたち庶民は何の疑いもなく、いとも簡単にその罠にはまり、心地よく差別構造を受け入れ、差別する側にまわる。
そして差別される人々を生み出し、定着させるのだ。

絶対的権力者や、人の上に人を作る階級、また特別な存在を許さないとの社会の決意が本当は必要である。
そして、ボクたちは権力を行使したいと願っている勢力の作り出す巧みな罠に常に敏感でなければならない。

      「罠つくる悪 罠にはまる悪」

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「いつか歩んだこの路」
塚田理著『象微天皇制とキリスト教』(新教出版社、1990年)によると、天皇制は日本国家の宗教的統一体的性格を象徴し、その原罪性は、自己正当化と無責任体制にある。それゆえ日本人としての各自の急務の一つは、「天皇が象徴であろうとなかろうと、〈天皇制〉はその時々の国家権力の政治的必要に応じて、いかようにも内容を盛りこむことのできる変幻自在の機能を持っている」ことの看破であるとし、「〈象徴〉は人々に依存感情と帰属意識を喚起し、またこれらを育成する。しかし、〈象微〉を自分の権益に役立たせたいと考える人々、とりわけ支配者、権力者たちは、これだけでは満足せず、やがて〈象徴〉を神聖化して、これを崇拝し、これに帰属する人々を〈象徴〉の絶対的権威のもとに完全に服属させようとするであろう」という洞察を与えています(9、60、167ー8頁)。
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