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熊本大地震と老婦人

熊本大地震の取材で現地に飛んでいたディレクターたちが、帰ってきた。

当初は宿泊する宿もなく、車で寝泊まりするなどそれなりの苦労を重ねたようである。
過酷で悲惨な現場を取材したディレクターの話は生々しく、臨場感に満ちていた。

取材班は最も被害の大きかったという宮園地区で被災者の一人の老婦人と出会った。
彼女は、二度目の震度7の揺れで、倒壊した家屋の下敷きになり、意識を失っている所を救助されて一命を取りとめた。

老女が救助されたのは夜中の3時半だったと云う。
彼女と一緒に埋もれていた時計の針は9時30分を指して止まっていたというから、6時間ほど屋根の下敷きになっていたことになる。

肋骨を骨折するという大怪我を負っていたにも関わらず、助け出されると、70歳の、その老婦人は、すぐに隣近所の人たちを助けるために働き始めた。
数時間前の自分と同じような状況下で、救助を待っている人たちのことを考えると、じっとしていられなかった。

「地震で倒壊した家の中を見ると、崩れるというのではなくて、強い力ですり潰したというのか、石臼で挽いたように、粉々になっていて、もの凄い力が働いていたことが分かります。大地震というのは尋常ではないですね。そんな中で、あのお婆さんはよく命が助かったと不思議なくらいです」とディレクターのKは語った。
「そして、そのあと我々は興味ある光景に出会ったのですよ」

その老婦人の家の前には、こんこんと湧水があふれ出す小さな水たまりがあった。
地震が起きる前は、近所の人たちがそこで野菜を洗ったり、洗濯したりしていた。
周囲の家々はほとんど倒壊してしまったが、その湧水はその大地震の後も枯れることもなく、清らかな水を湧き出していた。

ボランティアの人たちが、その水を利用して、シャワーの設備を作った。

その噂を聞きつけた近隣の被災者たちは大喜びし、何十人もの人たちが押し掛けて長い列を作った。
まさに命を蘇生させる宝の水となった。

肋骨を骨折した、くだんの老婦人は、生まれたばかりの子ヤギを抱きかかえて取材班に見せて語った。
「こんな中でも、命が誕生した。何もかも無くなった。でも負けんばい」

火山列島に生きるボクたちにとっては、大地震による災害は他人事ではない。
今日の熊本の人たちの苦しみは、明日のボクたちの姿である。

政府は施しではなく、被災者たちの立場になっての施策に労を惜しむことなく真剣に取り組むべきである。

      「血の通う 復興支援 待ち望む」


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