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早坂暁さんの東京脱出論

久しぶりに早坂暁さんと食事をした。
公私にわたり早坂さんとの付き合いは永いが、改めて調べてみると、その超人ぶりにびっくり仰天する。

「天下御免」「夢千代日記」「花へんろ」「ダウンタウンヒーロー」「必殺からくり人」などの脚本や小説は有名で多くの人たちをうならせ魅了したが、これまでに、なんと1000本を超す映画やドラマの脚本、小説を書いておられるという。

1000本というのはとてつもない本数である。
一年に10作品を書いたとしても100年かかる計算だ。

受賞歴を調べて、また驚いた。芸術祭大賞、放送文化基金賞、芸術選奨文部大臣賞、ギャラクシー賞、NHK会長賞、モンテカルロ国際映画祭脚本部門最優秀賞、プラハ国際テレビ祭大賞、放送文化賞、向田邦子賞、新田次郎文学賞、講談社エッセイ賞など、他にも余りにも多くの受賞作品があり過ぎて、それこそここに書ききれない。
それに前述した各賞を一度ならず、二度も三度も受けておられるのだ。

「ダウンタウンヒーロー」は直木賞の候補になった。
他に「紫綬褒章」と「勲四等旭日小綬章」を受勲している。

驚異的な仕事量もさることながら、これら多くの受賞歴が早坂さんの天才ぶりを如実に証明しているかのようである。
演歌の作詞もされていて、「夢日記」は大月みやこがNHKの紅白歌合戦で歌った。
こんこんと湧き出る企画発想力は枯れることのない才能の泉のようである。

これまでボクのような凡人が早坂さん、早坂さんなどと気軽に声をかけて、当たり前のように接していることは誠に恐れ多いことであるのかもしれない。

「長生きするのは良いけれど、親しい人たちがどんどん居なくなるのがつらいね」と86歳の早坂さんは珍しく詠嘆調である。
「渥美の清ちゃんとかね」
寅さん役で国民的俳優として名を馳せた渥美清は早坂さんの古くからの最も親しい友人だった。

「90歳で人を殺さなければならない事件などもあったりするけれど哀しいね。長生きの罪と云えばそれまでだけれどもね」
老老介護の疲れから起きる事件も後を絶たない。

「これからの日本の安全をどうして守るのかという大きな問題もあるしね。北朝鮮の暴発は恐いよ。中国も北朝鮮を抑えきれなくなっているようだしね。」と早坂さん。
「北朝鮮は水爆は持っていないようだが、潜水艦から発射できる核ミサイルがあるのは間違いない」

早坂さんは話術の名手で、次から次へと繰り出される話題とその話術にボクは思わず膝を乗り出すことになる。

「総理の安倍ちゃんは軍事力に頼ろうとしているが、それはどうかね。事が起きれば福島原発の爆発の騒ぎどころじゃないからね。」
「北朝鮮は本当に危険ですかね」と懐疑的なボクに「危ないね。金正恩は周囲の者をどんどん粛清して権力を守るのに必死になっている。それに自分の命を守るのにも必死で夜も安心して眠れない筈ですよ。本人もどうして良いか分からなくなっている。危ない。そこで、われわれ庶民はどうすればよいか」と早坂さんは一息いれてお茶を啜った。

「移民するしかないのだが、僕が考える移民先は三つある。ひとつはハワイ。あそこは日本人も多いし日本語が通じる。二番目はニュージーランド。三つ目はカナダのバンクーバーだな」
「先生はそんなことまで考えておられるんですか」とボクは驚いた。

「昭太郎さんは考えないの?」と早坂さんは意外そうである。
「ボクは東京から離れる気持ちにはなれませんね」
「ああ、そうかね。地震も心配だけれども、それは天災だとまだ諦めがつく。核爆弾にやられるのは癪だからね」

早坂さんは最愛の妹を広島の原爆で失った。
ご自身も被爆直後の広島の悲惨な現場を目撃されている。
これが早坂さんの著作の原点となっている。
反核の平和主義の早坂さんの原点である。
「夢千代日記」をはじめとする名作はそこから生まれた。

「それにテロも恐い。僕は東京オリンピックまでには東京を離れるつもりです」
そういう意味だったのか、とボクはこの時初めて気が付いた。

早坂さんは、以前から東京オリンピックまでに故郷の松山に帰るのだと言っていた。
その時は90歳になっておられるので、騒々しい都会を離れ、懐かしい故郷に戻り、静かな余生を送るつもりなのだと思っていた。
早坂さんは愛媛県教育文化賞や愛媛県功労賞なども受けておられる地元松山の名士でもあるからだ。

しかし、それはボクの大きな勘違いであったことに気が付いた。
早坂さんが東京を離れるのは、オリンピックを狙うテロを警戒されての「東京脱出」だったのだ。

「テロのための工作員がすでに東京に潜入して準備をしている筈ですよ。こういう危機の時代はオリンピックなどやらず、出来るだけ目立たずに静かにしていた方が良いと思うのだけれど。果たしてオリンピックを無事に開催できるかどうかも危ういですよ」

そう言われてみれば全くその通りである。
「おもてなし」で東京オリンピックの誘致に成功したと日本国中が熱狂したことが何故か愚かな事に見えてくる。
早坂さんの深謀遠慮には底がない。

「僕はいま、東京大地震の映画の脚本を書いているのだけれどね。テロの場合もそうだけれども、われわれ庶民の安全もさることながら、天皇をどこに避難させるかという問題がある」

なるほど、日本にはちょっと手のかかる象徴という存在がいたな。
東京一帯は間違いなく火の海に包まれるし、皇居外苑は海抜4メートルだからちょっと大きい津波に襲われたらひとたまりもない。

「神奈川にある葉山御用邸も下田の須崎御用邸も海辺に近いので津波危険地帯で避難できない。軽井沢も浅間山の噴火の恐れがある。さて、どうするか」と早坂さんはイカと野菜の旨煮を美味しそうに頬張った。

早坂さんは何にも増して中華料理がお好きである。
中華料理ならば毎日だって良いというほどである。
中でもイカが大の好物だ。

「どこに避難するんですか」と同席したスタッフが興味津々で尋ねると「安全な場所があるんだよ。下見に行って来たがあそこなら大丈夫だ。でも教えない」と早坂さんにっこり。

実はボクは以前に教えられてその場所を知っている。
そこは神奈川県の………なのだが、これは早坂さんの企業秘密なのでちょっと明かすことははばかられる。

3時間ほどの食事の後、麻雀を打って深夜の12時頃まで遊んだ。

「タクシーを拾いますか」と尋ねたわが社のスタッフに
「いや、僕は電車で帰ります」
深夜とはいえまだまだ多くの人たちで賑わう赤坂の雑踏の群れに飄々と姿を消された。

この先生、もとより並みの方ではないが、いよいよただ者ではない。

   「果てるなら 花のお江戸の 東京で」


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