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本音と建前

物事には常に表と裏がある。
建前と本音という云い方もする。

しかし、本音をすべて吐露しての議論というのは現実には難しいようである。
特に政治の世界では、それが顕著に現れる。

国会などでは、ほとんどすべての議論が建前で行われるので、何が話されているのかが分からないし、本当の姿が見えて来ない。
政治評論家と称する専門家たちが解説してくれるのを聞いて、ああ、あれはそういう意味なのか、などと頷いたりもするのだが、それでもその解説もやはり建前の域を出ないことが多いので結局のところは何だか分からない、ということになる。

一方、野党の先生方も、国会質疑などで、慣れ合いなのか勉強不足なのかは知らないが、舌鋒だけは鋭いが、内容が伴わないので、不毛の論議で終わる。
政局がらみの時だけは野党の活躍が目立つ、というのが現状だ。

先日、弁護士のHさんと食事をした。
Hさんは60歳を少し過ぎた熟練の弁護士である。
つい最近、ある案件で大変お世話になり、まずはお礼を兼ねての酒席からお付き合いが始まった。

安保法案のことが話題に上がった。
「8月30日の国会正門前のデモは3万人ですね。あの広さではそれ以上の人数は無理ですね」とHさんは云った。

主催者は12万人と発表したが、警察の発表では3万人となっている。
こういう数字は主催者側と警察とでは大きく異なるのが通例である。

いったい本当のところはどうなのかと、今回のデモの参加者の実数を調べた人がいる。
実際にデモに参加したその人の調べだと、国会正門前には3万人程度が最大の許容人数だと云う。
しかし、厳重な規制が敷かれた状況下で、正門前にたどり着けずにその周辺にいた参加者たちも多い筈だと、その人は観察した。

そこで、当日国会周辺の地下鉄の最寄り駅4駅の改札を出た人数を調べ、そこから差し引きして推測したデモ参加者人数は、およそ7万人以上になるという。
赤坂見付駅はどうしてもデーターを開示してくれなかったのでそれを勘定に入れると、更に参加人数は増える。

従って、国会正門前のデモ参加者は3万人という警察発表も正しいし、周辺の参加者を含め12万人という主催者発表も正しいのではないか、というのがその人の結論である。
なるほど、物事は調べれば、当たらずと言えども遠からず、実態に近い姿に近づくものである。

「それにしても、国会議員がデモに参加して、それに頼るというのはどんなもんでしょうかね」とHさんは云う。
選挙によって選ばれ、国民の負託を受けた国会議員は、国会で死力を尽くすべきで、デモに参加するなどは無様だとのHさんの論は正論である。
勿論、政治活動の一環としてデモに加わることは自由であるが、その力に頼ろうとするのではいかにも情けない。

「国民も、選挙で選んだ結果がこういう形の政治を生み出しているのだから、今さら何を騒いでいるのか、と私も思っているんです」と同席した妻の意見もあった。
これもまた、正論である。
憲法改正を初めから謳っている政党を支持し、圧倒的多数の国会議員を選出したのは、われわれ国民であることはその通りである。

しかし、共同通信8月14、15日の世論調査によると、戦後70年に当たって安倍首相が発表した首相談話で、安倍政権の支持率が多少持ち直したとは云え、依然として不支持率が支持率を上回っている。

また、安保法案の今国会の成立に関しては、賛成29.2%、反対が62.4%と多くの国民が反対していることもまた事実である。
そんな世論の中にあって、安保法案が今月14日の週内の成立に向けて進んでいる現実がある。
間違いなく安保法案は成立する。

これらをどう考えるかである。
野党の非力やだらしなさは腹立たしいし、国民も前から分かっていることをいまさら騒いでどうなるの、という面はあるが、それでも、これが議会制民主主義の形なのだから仕方が無いと割り切れない人々が立ちあがったデモを愚かな事とは断罪できない。

今回のデモに集まっているのは、組織動員は勿論あるだろうが、多くは普通の人たちである。
この法案が内包している危険性を危惧する一般市民である。

「安保法案を戦争法案だと思いますか」とHさんは少し皮肉っぽくボクに問うた。
「この法案が成立したから、はい、戦争、などという風には思わないし、いくら安倍政権でも積極的に戦争をしようなどと考えているとも思わない。ただ、この安保法案の成立に続いて、憲法改正が待ち構えていることは事実です。これは許してはならない。ボクたちに最も必要なのは、戦争は絶対にしない、という不戦の決意だと思います」いささか単純めいて青臭いかもしれないと思いながらではあったがボクそう応えた。

「わたしも戦争をすることには反対です。それは同じです。しかし、集団的自衛権の行使を認めていない国は無いでしょう」とHさんは云った。
「不戦の決意を国家の決意として全世界に発信することが何よりも大切で、その決意をあやふやにするような一切の言動や法案は慎むべきだと思っています。中国や韓国、北朝鮮などアジアの近隣諸国と友好な関係を築くことを第一義として、それらの国々に不安を感じさせるようなことはするべきではないと思います」

先日書いた、降伏文書でも明らかなように日本は「天皇および日本国政府は連合国最高司令官の下に、隷属するものと定める」との条件の下で先の戦争を終結した。
そして占領下の屈辱を味わわされ、それが解かれた後も、実質的にはアメリカに従属する形で現在があることは誰もが認めるところである。

アメリカに叛旗を翻した政権はアメリカの手で倒されるのを見て来た。
従属の中で独立国としての体面を保つことは困難である。
政権運営を担う者の苦労は察するに余りある。

そして安保法案の本質もここにあることは理解できる。
日本に脅威を与える国家は中国や北朝鮮などであろう筈はなく、最も恐ろしいのは実はアメリカである。
そうだからと言って、唯々諾々と安保法案を受け入れるのは賢明なことだろうか。

一方で、憲法はアメリカから押し付けられたものだから、これを改正すべきだとの論がある。
しかし、そうならば、ここはそれを逆手にとって、日本には、先人があなた方から頂いた大切な日本国憲法がある。
これを守って行くことがそれを受け継いだ子孫としての役目です、との論を張るべきだと思う。

実際に、多くの憲法学者が安保法案は憲法違反であると断定している。
近くは、山口繁元最高裁長官も安保法案を違憲であるとの見解を示した。
憲法の番人である最高裁の元トップの発言の意味は重い。

その意味では、日本国憲法は日本を守る最大の武器である。
そして、それはアメリカからいただいたものだ、との強みもある。

翻ってみれば、もともと議会制度を含めて、日本の近代化に向けての動きの中で、日本独自の文化は賛否は別にして天皇制の他に何があるのだろうか。

日本はこれまで、古くから中国や朝鮮半島から文化を取り入れ、明治維新以来西欧列強に蛮族と言われ、攻め滅ぼされないために文明開化と称し、競って西欧文化に習ってきた。

古来から、外来文化の長所を日本流にアレンジするのが日本のお家芸の筈である。
日本の神話でさえ、外来の思想を取り入れているということも耳にしている。

アメリカの考えた憲法であっても良い所は受け入れることに躊躇する理由は無い。
ことに憲法第九条の戦争放棄の思想は人類としての夢であり意義のある実験である。
この壮大な実験を成功させる努力を続けられることは大きなチャレンジである。

時代の変化に伴い、憲法を含めた様々な約束事の見直しはする必要はあるだろう。
世界は動いているし、生き物である。

現実の動きとそれら約束事とのかい離はある程度は正すべきである。
硬直化すれば破綻を来すことになる。

しかし、その根っこにある大切な芯を変えることがあってはならない。
ボクは特別の思想信条がある訳ではない。
何十年来、支持政党もなければ政治にも鈍感で、無責任を任じて生きている。

しかし、少なくとも、憲法第九条の不戦の思想だけは大切にしたいと考えている。

   「建前を いまこそ生かせ 第九条」


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Comment
人類は、すでに実験済み
「憲法第九条の戦争放棄の思想は人類としての夢であり意義のある実験である。この壮大な実験を成功させる努力を続けられることは大きなチャレンジである。」
と書いておられますが、人類はすでに実験済みなのです。

イスラエル・ユダヤがその実験民族でした。そして、失敗しました。
失敗の経緯を記録しているのが聖書です。
失敗の理由は、個々人に巣食う我執(エゴイズム)でした。

イエスは、このイスラエル・ユダヤが失敗した「平和共存」の条件を、エゴイズムからの百八十度の方向転換である「悔改め」として要請しました。
ところがこれを説いたイエスをイスラエル・ユダヤ人は十字架につけて殺しました。

そのことは、「平和共存」の条件である「より弱い者の弱さを負う」ことが、生来の人間には不可能であることを実証したことになります。「全に対する個の背反」というエゴイズムからの百八十度の方向転換は、個が自らを「無きに等しい者」として自覚するまでは不可能であることを意味します。

お書きになられている「壮大な実験を成功させる努力」は、すでに聖書が達しているこの帰結をベースにして始める必要があるのでしょう。
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