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あるパレードの風景

ボクが住んでいる信濃町から四谷三丁目を経由して新宿の繁華街までプラプラ歩いて3~40分。
ちょっと遠回りをして、神宮外苑から千駄ヶ谷の駅前のイチョウ並木を通り北参道口から明治通りを行っても小一時間で新宿に着く。
ほど良い散歩コースだ。

先日の日曜日はもっと遠回りをして、青山一丁目経由で新宿に向かった。
途中で一息入れようと千駄ヶ谷の駅前にある喫茶店のテラスでコーヒーを飲んでいると、遠くからブラスバンドの音が聞こえ始め次第に大きくなって来る。

演奏曲は早稲田大学校歌のようだ。
都の西北 早稲田の森に……久々、耳にする懐かしいメロディーに思わず見やると、黒い学ラン姿の数人からなる応援団の学生の持つ大きな校旗を先頭に、ブラスバンドの一行が続き、その後ろからチアガールの集団、そして手に手に提灯を持った何百人とも知れぬ学生たちが元気よく車道を歩いて来る。

どうやら、六大学野球で早稲田大学が優勝したらしく、神宮球場から繰り出して来た優勝祝賀のパレードらしかった。

脳裏に50年以上も前の光景が突如甦った。

ボクも、早稲田大学の学生だった頃、一度だけ神宮球場で行われる早慶戦の応援に行ったことがある。
六大学野球でも早慶戦は特別の戦いだった。

その試合の記憶は全く無いが、試合の後、新宿の歌舞伎町に繰り出し、明け方まで乱痴気の大騒ぎをした。
当時は物騒だと言われていた歌舞伎町にあって、誰が払ってくれているのか分からない酒を思いっきり飲んだものである。

すでに卒業し社会人となった先輩なども来ていて、一緒になって騒いでいた。
恐らく、そういった先輩連中のお世話になっていたのだろうと思う。

慶応の学生たちは銀座に、早稲田の学生は新宿に、というのがその頃の習わしだった。
歌舞伎町のお店も早慶戦のある日だけは特別の応対をしてくれていたようで、学生たちの狼藉ぶりを受け入れてくれた。

迷惑に違いなかったが、そんな定例となった行事を許容する度量があった。
ある意味大らかな時代でもあったのだろう。

パレードの長い行列を眺めながら、すでに幻となった過去のさまざまな一瞬の映像が点滅した。

ボクは妻を促し、喫茶店を出て、車道を行くパレードについて歩道を歩いた。
楽隊やチアガールたちは行列の各所に配置されている。

眩しいほど、溌剌として踊る無邪気なチアガールたちが、とても幼く見えた。
妻はしきりに彼等の写真を撮っている。
娘が同じ大学を数年前に卒業したからかもしれなかった。

「何だかしらないけれど涙が出て仕方がないわ」と妻は感動している。
勝利を祝い、誇らしげに行進する若者たちの姿は純粋で確かに感動的なものだった。

パレードの行列が、北参道口の交差点を右に折れ新宿の方向に向かうのが見えた。
「どこまで行くの?」とボクは、まだ暑い日差しの中で学生服を身に付けた応援団の学生に聞いた。

「早稲田大学まで行進します」と学生は礼儀正しく答えた。
いかつい顔に、しかし、まだ幼さを漂わせている。

ああ、俺にもこんな時代があったのだな、と思った。
過去の感傷に心を移す自分を不思議に感じた。

「もし、戻れるとしたら、何歳に戻りたい?」と妻はボクに尋ねることがある。
そんな時必ず「戻りたくはないよ。今が一番良いよ」とボクは答える。
もし、仮に戻っても、きっと同じ道を歩むに決まっているからである。

しかしこの日のパレードは、ボクに青春のヒトコマを甦らせてくれた。
その青春の正体がどういうものかは自分でも説明できないが、あえて言えば、人生は可笑しなものだな、とでも表現するのだろうか。

以前、施設にいる母を見舞った時、母がボクの顔をじっと見て「人生は可笑しなもんやな」とつぶやいたことがある。
ずっと、その意味が分からなかったが、やっと母の言葉が理解できたような気がした。
「人生は可笑しなもんや」。

パレードは賑やかに明治通りを新宿に向かった。
ボクたちも、そのパレードにずっとついて歩いた。

そして、新宿三丁目の伊勢丹デパートの前の喧噪の中を早稲田鶴巻長の方にさらに行進して行く学生たちの姿をいつまでも見送っていたのだった。

   「人生は 可笑しなもんや 異なもんや」


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