不祥事が起きた!
恥を忍んで、つい最近、わが社で起きた不祥事のお話をする。
ある民放のローカル放送局に出向させていた若いスタッフが、任期半ばで戻されるという事態が起きたのである。
本人からの虚偽の報告が二件続いたというのが、その理由だった。
そのスタッフHは、入社3年目で昨年の10月から、そのローカル放送局の報道局に勤務していた。
局からの突然の解雇通告を受けて、わが社の取締役制作部長が、急きょ局に赴き、局の責任者から説明を受け、スタッフであるH本人とも会って事情を聞いた。
その報告によると、虚偽報告のひとつめは、ある映像資料を放送使用する際の著作権処理に関するもので、Hは処理したと上司に報告していたが、その後局の調べで、正式な著作権処理の最終確認がされていなかったことが判明したというものであった。
二件目は、ネパールの大地震関連報道で、地元の団体が4名の医師をネパールに派遣したとHが取材して報じたが、放送後、その団体から、派遣した医療関係者は4名だが、全員が医師ではなく、看護師等々もいたとの指摘を電話で受けた。
Hはその電話のあったことを上司に報告せず、翌日あらためて団体から指摘があり、問題化したというものだった。
詳細は省くが、このやりとりの過程で言った、言わない等の出来ごともからんでいるようだが、局はこの事案に関して徹底的に各関係者の証言を調べたようである。
局はこの二件のHの対応について、不適切であったと判断し、Hの解雇通告をしてきたことが判った。
前もっての連絡もなく、いきなりの通告にボクも多少の驚きを隠せなかった。
というのも、このローカル局との付き合いは実に長いものだったからである。
ボクが日本テレビに在職中からの期間を含めると、40年以上になる。
オルタスジャパンを設立した後も、この局がプロデュースする全国ネットのレギュラー番組を制作したり、人的交流も頻繁で、これまでお互いの信頼関係も厚く、ボク自身の人脈も多い。
現在の社長とも、かつて番組の制作で共に汗を流した仲である。
これほど親密な関係にある局が、突然の解雇通告をしてくるには、それだけの理由がある筈だった。
ボクは、同局の元専務取締役を務め、現在関連会社の社長をしているO氏に別の裏事情があるのではないかと確かめてもらったところ、「二件の虚偽報告の問題がすべてで、Hは報道マンとしての資質に大きく欠けるため、仕事の上で信頼関係を築くことができない、と局が判断した」との返答を受けた。
数年前から、各テレビ局のコンプライアンスに対する取り組みが強化された。
講習会が頻繁に行われ、その度にわが社も出席している。
10数年前になるが、NHKで、ある番組の局のプロデューサーのIDカードを、わが社のスタッフが、ついでだからと別の番組のために使用したことが明るみになり、処罰としてそのレギュラー番組から半年間外されるという事件が起きたことがある。
ほんとに些細な不注意のために会社が大きな打撃を受けたのだった。
それ以来、コンプライアンスに関しては、特別の注意を払って来ていたのだったが、この度の不祥事が起きた。
当然ながら、ボクもHから直接、事情を聞いた。
「悔しい」という言葉がHから出た。
言った、言わない、伝えた、伝えていない、の水かけ論のことを指しているらしかった。
しかし、いろいろな情報を総合的に照らし合わせ、客観的に判断すると、Hの言い分はあやふやで、局の調査や判断に間違いの無いことは明らかだった。
わが社内においても、Hがこれまでに、事務処理等々に関して不明朗な点が多々あったことなども分かってきた。
さて、会社として、Hの処遇をどうするべきかについて、取締役会で検討した。
特に、社外取締役の方々からは、厳しい意見が出された。
責任問題はともかくとして、同じ過ちを犯す可能性が大きく、場合によっては、会社の存続上に大きな危険をもたらすことになるのではないか、というものだった。
これは、社員教育以前の人間性の問題であり、その恐れは十分にあることは確かだった。
しかし、一方で、正規の入社試験で採用したというボクたちの責任もある。
前途有為のひとりの青年の人生にかかわることでもあり、その対処に苦慮した。
二度の取締役会を開いた末に、ボクはHに彼の「本心」を書かせることに決めた。
Hが、二件の虚偽報告について総括し、潔く虚偽の報告をしたことを認め、自分のとった行為の不正確さ、あいまいさ、そして局の信頼を失うことになった嘘について正直に告白し、心を入れ替えてこの仕事を続けて行きたいとの赤裸々な「本心」を期待した。
その内容次第で、もう一度Hにチャンスを与えようと考えていた。
しかし、A4にまとめられた彼の「本心」は、辞職という言葉だった。
自分の未熟さを認め、会社に迷惑を掛けたことに対する反省は綴られてはいたが、ボクが期待した「本心」ではなかった。
辞職という言葉に、ある種の潔さは感じられたが、気持は大きくすれ違っていた。
物事がスムーズに進んでいる時には何の問題もない。
しかし、どんなに注意していても、失敗やトラブルは必ず起きる。
それはある意味仕方のないことで、ボクはこれまでスタッフの失敗に対してその責任を問うたことは一度も無い。
問われるのは、トラブルが起きた時の対処にある。
包み隠さず、上司に報告し、そのトラブルから逃げないことが大切である。
嘘は必ず次の嘘を生み、ますます事は大きくなることは必定である。
まずいことほど、出来る限り早く対処する。
そのまずいことが、いかに小さなことであっても、早く対処することが、問題を大きくしないで済ませる一番の鉄則であることを改めて胆に銘じておきたい。
「恋心 親心ともに すれちがい」

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ある民放のローカル放送局に出向させていた若いスタッフが、任期半ばで戻されるという事態が起きたのである。
本人からの虚偽の報告が二件続いたというのが、その理由だった。
そのスタッフHは、入社3年目で昨年の10月から、そのローカル放送局の報道局に勤務していた。
局からの突然の解雇通告を受けて、わが社の取締役制作部長が、急きょ局に赴き、局の責任者から説明を受け、スタッフであるH本人とも会って事情を聞いた。
その報告によると、虚偽報告のひとつめは、ある映像資料を放送使用する際の著作権処理に関するもので、Hは処理したと上司に報告していたが、その後局の調べで、正式な著作権処理の最終確認がされていなかったことが判明したというものであった。
二件目は、ネパールの大地震関連報道で、地元の団体が4名の医師をネパールに派遣したとHが取材して報じたが、放送後、その団体から、派遣した医療関係者は4名だが、全員が医師ではなく、看護師等々もいたとの指摘を電話で受けた。
Hはその電話のあったことを上司に報告せず、翌日あらためて団体から指摘があり、問題化したというものだった。
詳細は省くが、このやりとりの過程で言った、言わない等の出来ごともからんでいるようだが、局はこの事案に関して徹底的に各関係者の証言を調べたようである。
局はこの二件のHの対応について、不適切であったと判断し、Hの解雇通告をしてきたことが判った。
前もっての連絡もなく、いきなりの通告にボクも多少の驚きを隠せなかった。
というのも、このローカル局との付き合いは実に長いものだったからである。
ボクが日本テレビに在職中からの期間を含めると、40年以上になる。
オルタスジャパンを設立した後も、この局がプロデュースする全国ネットのレギュラー番組を制作したり、人的交流も頻繁で、これまでお互いの信頼関係も厚く、ボク自身の人脈も多い。
現在の社長とも、かつて番組の制作で共に汗を流した仲である。
これほど親密な関係にある局が、突然の解雇通告をしてくるには、それだけの理由がある筈だった。
ボクは、同局の元専務取締役を務め、現在関連会社の社長をしているO氏に別の裏事情があるのではないかと確かめてもらったところ、「二件の虚偽報告の問題がすべてで、Hは報道マンとしての資質に大きく欠けるため、仕事の上で信頼関係を築くことができない、と局が判断した」との返答を受けた。
数年前から、各テレビ局のコンプライアンスに対する取り組みが強化された。
講習会が頻繁に行われ、その度にわが社も出席している。
10数年前になるが、NHKで、ある番組の局のプロデューサーのIDカードを、わが社のスタッフが、ついでだからと別の番組のために使用したことが明るみになり、処罰としてそのレギュラー番組から半年間外されるという事件が起きたことがある。
ほんとに些細な不注意のために会社が大きな打撃を受けたのだった。
それ以来、コンプライアンスに関しては、特別の注意を払って来ていたのだったが、この度の不祥事が起きた。
当然ながら、ボクもHから直接、事情を聞いた。
「悔しい」という言葉がHから出た。
言った、言わない、伝えた、伝えていない、の水かけ論のことを指しているらしかった。
しかし、いろいろな情報を総合的に照らし合わせ、客観的に判断すると、Hの言い分はあやふやで、局の調査や判断に間違いの無いことは明らかだった。
わが社内においても、Hがこれまでに、事務処理等々に関して不明朗な点が多々あったことなども分かってきた。
さて、会社として、Hの処遇をどうするべきかについて、取締役会で検討した。
特に、社外取締役の方々からは、厳しい意見が出された。
責任問題はともかくとして、同じ過ちを犯す可能性が大きく、場合によっては、会社の存続上に大きな危険をもたらすことになるのではないか、というものだった。
これは、社員教育以前の人間性の問題であり、その恐れは十分にあることは確かだった。
しかし、一方で、正規の入社試験で採用したというボクたちの責任もある。
前途有為のひとりの青年の人生にかかわることでもあり、その対処に苦慮した。
二度の取締役会を開いた末に、ボクはHに彼の「本心」を書かせることに決めた。
Hが、二件の虚偽報告について総括し、潔く虚偽の報告をしたことを認め、自分のとった行為の不正確さ、あいまいさ、そして局の信頼を失うことになった嘘について正直に告白し、心を入れ替えてこの仕事を続けて行きたいとの赤裸々な「本心」を期待した。
その内容次第で、もう一度Hにチャンスを与えようと考えていた。
しかし、A4にまとめられた彼の「本心」は、辞職という言葉だった。
自分の未熟さを認め、会社に迷惑を掛けたことに対する反省は綴られてはいたが、ボクが期待した「本心」ではなかった。
辞職という言葉に、ある種の潔さは感じられたが、気持は大きくすれ違っていた。
物事がスムーズに進んでいる時には何の問題もない。
しかし、どんなに注意していても、失敗やトラブルは必ず起きる。
それはある意味仕方のないことで、ボクはこれまでスタッフの失敗に対してその責任を問うたことは一度も無い。
問われるのは、トラブルが起きた時の対処にある。
包み隠さず、上司に報告し、そのトラブルから逃げないことが大切である。
嘘は必ず次の嘘を生み、ますます事は大きくなることは必定である。
まずいことほど、出来る限り早く対処する。
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