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戦後70年のテレビジャーナリズム

昨年の今頃は、「来年は戦後70年の節目を迎えるので、新聞、テレビを含めてマスコミは、こぞって様々な特集や特別企画を取り上げるだろう。さらに10年後の戦後80年となれば、太平洋戦争の記憶もすっかり風化する。来年が最後の節目の年になるだろうから、マスコミも力を入れて、取り組むことになるにちがいない。ボクたちも積極的に、このテーマの企画に取り組もう」とスタッフたちと語り合った。

そして、1年が経った現在、テレビの現状は果してどうか。

テレビ局によって若干の温度差はあるものの、現実は、その期待とは裏腹な結果となっている。
テレビ局が、「戦後70年企画」を積極的に取り上げていない理由はいくつかある。

どんなに大きな出来ごとがあっても、70年も経つと風化するということがある。
ボクたちは「戦後」と簡単に表現して、それは太平洋戦争の戦後を意味するが、10代、20代の若者たちには、ピンと来ないであろうことは容易に推測できる。

この間、あまりにも多くの戦争があって、どの戦争の戦後かも定かではなくなっている。
ボクが20歳の頃に、「日露戦争の時は………」と云われても、全くリアリティーは無かった。
それは、遠い歴史のひとコマとしての認識でしかなかった。

日露戦争は1904年~1905年に起きた戦争だから、ボクの20歳の頃からみれば、わずか58年前の出来ごとである。
それからみると、戦後70年などと比較すると、もっと身近な期間の筈だったが、遥か遠い歴史としてしか受け止めることができなかった。
生まれる前の出来ごとだけに、風化以前の問題でもあった。

もっとも、日清、日露戦争と太平洋戦争を同列に述べることはできないが、時間の経過とはそういうものである。
多くの人たちは70年も前の太平洋戦争への興味を失っている。

それでも、なんとか、風化を防ごうとの努力をしているのだが、太平洋戦争を実際に体験した人たちも少数となった。
70歳を過ぎたボク自身も、勿論戦争体験は無く、伝聞による追体験に頼ることになる。
その意味では現実味に欠けることは致し方ないことである。

伝承は必要だが、結局は、体験者だけが、真の意味で伝承可能なのかな、とも思う。
ドイツのように厳しい法律で伝承を義務付けている国家もあると聞くが、果して、それもどこまで効果があることなのかには疑問がある。

もうひとつの理由に、テレビ局の事情がある。
実際に、テレビ局は、編成局が大きな力を持っている。
どういう番組を行うかについての決定権は最終的には編成局が握っている。

視聴率競争に明け暮れるテレビ界にあって、多くの人々の興味を失っているテーマを取り上げることは、理屈上難しいということになるようだ。
そんな理由で、当然、編成局は視聴率のとり難い「戦後70年企画」については消極的になる。

これはこれで理屈である。
いかにも理屈が通っているように聞こえる。

しかし、テレビジャーナリズムの立場として、それで良いのか、との大きな問題がある。
10年前も20年前も「戦後企画」が大きな視聴率を取っていたという訳ではない。
この手の番組はいつの時代でも、視聴率では苦戦して来た。
特別、今に始まった話ではないのである。

それでも、各テレビ局は、テレビジャーナリズムの意義と誇りをかけて、正面から、過去に犯した戦争について論じ、二度と同じ過ちを冒すことがないようにとの願いを込めて、その伝承についての労力を惜しまなかったのだった。
風化を前提として、それでもその風化を少しでも食い止めようとの努力があった。

あるテレビ局の編成の責任者のように「戦争ものは視聴率がとれないのでわが社ではやる気はありません」などとの発言はこれまでには無かったものである。
これは一体何を意味するのだろうか。

この動きは、ひとつのテレビ局だけでの現象ではなくて、いくつかの局に共通する傾向なのである。
ジャーナリズムの担い手である筈のテレビ局が、その使命を忘れ、自らが風化し、崩壊しているのか。あるいは、世相の反映なのか。
現政権へのおもねりや、圧力の結果でないことを願うばかりである。

そんな状況の中で、実は、ボクたちは「戦後70年企画」を現在制作中である。
せっかく与えられた数少ないチャンスであるだけに、報道番組だから、しっかりとした内容の番組を作れば良い、とのこれまでのような考えはすでに許されない。

視聴率は勿論のこと、当たり前では風化し、戦争に関して積極的な興味をすでに失っている多くの視聴者に、あらためて関心を持ってもらえるような番組作りが求められている。
遠い過去の出来ごとではなく、現在という時代に生きるボクたちの在り様を問う、そんな番組作りが必要である。

視聴率礼賛ではないが、ボクたちの仕事は、あくまでも視てもらえてナンボの世界であることからは逃れられないからである。
視聴率を言い訳にさせないためにも、どうしてもその努力と知恵が求められている。

      「追うほどに 逃げ足速し 視聴率」


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Comment
「先祖の罪」
仰る通り、日本では戦争は風化しています。
法のあるドイツでも、ネオ・ナチに困っています。

戦争体験をもっとも長く記憶し、記録したのは、ユダヤ・イスラエル人でしょう。
その記録の書が「聖書」ですから、世界中の誰でもが、その気になれば読めるわけです。
おそらく、今後も末永く続くでしょう。

その「聖書」から「先祖の罪」について書きました。
ご参考までに・・・
http://mis191103.blog.fc2.com/blog-entry-417.html
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