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人生の涙

「幸せな筈なのに、どうしてこんなに泣きたくなるのかしら……」と妻は涙を流した。

「若い頃は、どんなに辛いことがあっても泣かなかったのに……。泣き虫小虫になっちゃった」と云って、また泣いた。
「それは、きっと人生の涙だよ」とボクは云った。
「人生の涙?」
「うん。命には限りがあるからなあ。歳を重ねてくると、色んな悲しみが見えるようになるんじゃないの」

妻はひとしきり泣いた後、「長生きしてね」と云った。
「そうねえ。ほどほどに頑張るよ」とボクは妻と自分自身を煙に巻いた。
妻とは、いささか年齢が離れているので「長生きしてね」が妻の口癖になっている。

近頃では、何かにつけて、この長生きというのが大きなテーマのひとつである。
そして、これが、なかなかの曲者なのである。

たった一度っきりのチャンスしかないので、それだけ人生はとても大切だし、永く生きることは多くの者にとっての願いであることは当然のことである。
しかし、高齢化が極端に進む日本であるからこそ、長く生きることの辛さや困難を身近に見たり聞いたりして、ただ長生きすることが幸せなことなのかと、長生きを手放しで喜ぶことが出来なくなっているのが現実である。

そろそろ年末が近づき、ボクの手許にも、喪中の挨拶状が届き始めている。
それを見ると、95歳とか92歳とか、亡くなられた方々の年齢はどなたもご高齢である。
70歳代だと、まだまだ若いのにとさえ感じてしまう。

こんなことを云っているボクの母親も94歳で施設にいるが健在である。
そしてボク自身が70歳を過ぎて、フーフー言いながらも、なお毎日出社し、元気で働いていると、何歳からを長生きというのかの判断がなおさら難しくなってくる。

先日、作家で脚本家の早坂暁さんと食事をした。
早坂さんは今年85歳になられたが、いつもテレビの新しい企画を考えておられて、その創作意欲が枯れることはない。
お会いする度に、ボクたちは早坂先生のエネルギーに刺激を受け、がんばらなければと奮い立たされるのである。

今でも、徹夜での麻雀を乱れることなく、平然と打ち続けられる。
胃は半分以上摘出されているし、胆嚢は無いし、70歳の時に心臓を開いての大手術をされた。
前立腺にはガンを持っておられるし、とにかく身体という身体中にメスが入っている。
満身創痍の見本のような方である。

過去には、ボクが食事をご一緒している時に倒れられて、救急車で病院にお連れした経験もある。
それにもかかわらず、不屈の精神力と云うべきか、恐ろしくお元気なのである。

その早坂さんの言葉のひとつに「仕事をしなくなったらお仕舞い」がある。
悠々自適で趣味に生きる、という生き方も一方で、ある。
しかし、働けるうちは働き続ける、という生き方もある。

ボクが密かに尊敬している方がいるが、後期高齢の年齢を過ぎても、学校の守衛の仕事をされている。
経済的に困っている訳では勿論ない。
彼は、生きている限り、労働は人としての義務だとの信念を持ち、それを忠実に実行されているのである。

ボクもいい歳になって、会社の後継者の体制作りを迫られている。
後進に道を拓くことは同時に大切であるし、老害で会社を危うくすることだけは、絶対に避けなければならない。

しかし、その形はどうあれ、「引退」の二文字は、いましばらく封印しておこうと考えている。

   「年金の 欲しさ一途で 社長辞め」


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