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「生きている兵隊」を読みましたか?

先日、久し振りに、萩原猛さんが会社に来られた。
萩原さんは、日本労働党の機関紙「労働新聞」で記者をしておられた。

日本労働党は、かつて日本共産党が打ち出した自主独立路線に反対し、共産党から除名された親中国派が結成した政党である。

萩原さんは、すでに政党の活動からは離れておられるが、当然ながら中国の事情通で、度々中国を訪れ、一昨年「上海今昔ものがたり」を論創社から出版されている。

今年暮にも講演のために南京を訪問するようだ。
来年の春には、「敗戦70年 降伏文書を知らない日本人 国のあり方を問う」を上梓される予定である。
ボクよりも年長だが、実に精力的に活動されている。

「ところで石川達三の『生きている兵隊』は読みましたか?」と萩原さんは突然聞いた。
「まだですか。是非とも読んで下さいよ」と云う。

萩原さんと別れた後、ボクは早速近くの書店に行き、買い求めて読んだ。

「生きている兵隊」は第一回芥川賞を受賞した当時新進気鋭の作家石川達三の従軍記である。
この小説は昭和13年の中央公論に発表されたが、書店の店頭に並べられる暇も無く発売禁止となった。

ボクが買い求めた「生きている兵隊」は1999年に初版が発行されて以来、2013年に11刷発行となった伏字復元版である。

石川達三は中央公論特派員として昭和12年12月中国戦線へ従軍した。
上海経由で南京に入る。

日本軍が南京を攻略したのは昭和12年12月13日。
石川達三が南京に到着したのは昭和13年1月5日なので、東京裁判で明らかにされた南京虐殺事件は目撃していない。

「生きている兵隊」に半藤一利さんが記されている解説の一文を引用させていただくと
「われわれがこの小説を読むことができたのは戦後である。中略。
話には聞いていたが、読みながらしばしば息を呑んだ。
冒頭、民間人かスパイかわからない青年を、日本軍の伍長が無造作に捕えて土手に座らせ、首を斬って河に蹴込む、というショッキングな場面からはじまる。
舞台は上海から転戦し、南京攻略戦に加わるが、その戦闘続行の間に、現地徴発という名の略奪、若い中国女性を裸にして刺し殺す兵士、逃げる中国人の頭をシャベルで割って武勲を誇る従軍僧、と残忍さが日常と化した「皇軍」の実態が点綴して描かれる。
それ以前の昭和23年11月に判決の下った東京裁判で、南京虐殺という思いもよらない残忍な事実を知らされていたから、この小説に描かれたむごい光景の一つ一つが胸にしみ、背筋に冷たいものを走らせた。
そして、あの戦時下という冷酷無残な時代に、よくぞまた勇を鼓して書いたものよ、と作者の精神の強靭さに心からの敬意をいだいたことであった」

中央公論社は、この小説のところどころを伏字で発行したが、内務省は「聖戦にしたがう軍を故意に非謗したもの」「反軍的内容をもった時局柄不穏当な作品」として発売禁止とした。

石川達三も警視庁に連行され、起訴された。
判決は禁固4カ月、執行猶予3年という予想を越えた重いものだった。

半藤一利さんはこの判決についてこう記されている。
「石川達三の憂国の至情や、戦争にたいするリアリスティックな認識などてんから認められることはなかった。つまり、表現の自由はすでになくなっていたのである」

ボクが読んだ伏字復元版は、当時伏字になった個所に棒線が引かれている。
それはところどころというには多くの個所である。

しかし、「生きている兵隊」で描かれている戦争で行われた様々な行為の不法性や暴虐性は伏字ではとても消し去れるものではないことが理解できる。

この「生きている兵隊」の事件から75年。
そして、戦後70年。
萩原さんの表現を借りれば敗戦70年。
いまボクたちはどんな時代に生きているのか。

巷には物が溢れ、人々は自由を謳歌しているように見える。
先日のハローウィンでは若者たちか渋谷や六本木などの盛り場で夜明けまでそれぞれ思い思いの仮装をして飲み明かし、楽しむ姿も見られた。

自由な表現が許される、安全で平和なニッポンの姿である。
しかし、本当にそうなのだろうか。

国家である限り、報道や表現の自由など無いことは、ボクは百も承知している。
それは、ボクがテレビ局に在局時代に身をもって体験していることである。

しかし、それを承知の上で、現在ほど報道の自由が危機を迎えている時代をボクは知らない。
報道が政治の大きな影響を受け、自粛している時代を初めて体験していることを、これほどまでに感じたことはない。

ジャーナリズムに身を置くボクたちはどう生きるべきなのか。
石川達三の「生きている兵隊」は70数年の時を超えて、ボクたちにそのことを語りかけている。

  「繰り返す 歴史の海を 泳ぎ切る」


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