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遺言状を書く決心

先日の日曜日、日本橋の三越デパートで友人の誕生日のお祝いにマフラーを選び、デパ地下のパン屋さんでフランスパンを買い込み、地下鉄銀座線に通じる地下通路に出た。

「あ、あそこにもパン屋さんがあるわ」という妻の声がした。
見ると正面の向こうの明るい照明の中にパンの売り場が見えた。

そこはとても眩しいほどに輝いていた。
「あ、本当だ」ボクは、その透明にも近い感じで光る明かりに向けて引きこまれるように歩を進めた。

何度となく見て来た風景だが、そこにパン屋があることにこれまで気が付かなかった。
恐らく、新しく出来たお店に違いなかった。

と、一瞬、目の前の映像が中断した。
視界からすべての景色が消えた。
それはまるで空白の時間で、すぐには何が起きているのかが分からなかった。

次の瞬間、ボクは両の手のひらで地面を支えていた。
次に左足の膝に痛みを感じ、続いて右膝に念を押すような鈍い痛みを感じたのだった。
シャリーンという、頭にのっけていたサングラスが地面に落ちる鮮明な音が聞こえた。

ボクは両手両膝をついた四つん這いになっている自分に気付いた。
その時も、何が起きたのかはまだ分からなかった。

妻が驚いた声で「大丈夫?」と云っている。
パン屋の店員さんと思しき娘さんが「良かったらお店でお休み下さい」とか気遣ってくれている。

やっとのことで、尻をつき地面に両足を伸ばした格好で座り直すと、すぐ目の前に3段ほどの階段が目に入った。
ボクは、その階段があるのに気が付かずそのまま歩いて、階段を踏み外し、転んだのだとやっと分かった。

若い頃ならば、取りあえずサッと立ち上がってその場を去った所だが、そうはいかなかった。
両手、両足に骨折など大きな異常のないことを確かめたものの、息を整えて、立ち上がるまでにそれなりの時間を要した。

それにしても、あれだけの高い階段があることに気付かなかった自分に驚いていた。
どう考えてもあり得ないことに思えた。
誘蛾灯に誘われて灯りに向かう虫のように、パン屋の煌めきに一直線に突進したこと自体が不思議な出来ごとにも思えた。

家に帰って改めて見ると、両膝にそれなりの傷を負っていた。
転んだ時に力を入れたのか、肋骨をはじめ身体のあちこちが痛んだ。

間違いなく、老化現象のなせる結果に違いなかった。
「本当に気をつけて下さいね」という妻の声を聞きながら、これまで延ばし延ばしにしてきた遺書を、いよいよ書いておこうと決心したのだった。

   「人生は 何処にあるやら 落とし穴」


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