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空気のような存在

赤坂には東西に赤坂通りが走り、南北に一つ木通り、みすじ通り、田町通りと三本の通りがある。
田町通りは何年か前からエスプラナード赤坂と呼び名が変わっているようだ。

みすじ通りの南の端にあたる5~60メートルほどの通りには、特に韓国料理店が密集しており、別名「ヤッカン通り」の異名がある。
この一角はかつてリトルソウルと呼ばれた地域で、今でも夜になると周囲から聞こえてくるのはほとんどが韓国語である。

近頃では「ヤッカン通り」を口にする人たちも、古くからの人を除いて少なくなった。
ちなみに「ヤッカン通り」とは、ヤクザと韓国の多い通りという意味である。
当然ながら、この地域を差別した蔑称であることは云うまでもない。

ボクたちの会社はまさにこの「ヤッカン通り」のど真ん中にある。
この通りに越して来る前は、10年ほど、ここから300メートルほど離れた、赤坂5丁目に会社があったのだが、みすじ通りに越すと聞いて、5丁目の地元の古い人たちは、どうして「ヤッカン通り」のような所に行くのか、と反対したものである。

ここに引っ越してすでに15年以上が経つ。
そして、ボクはこの通りをとても気に入って毎日を過ごしている。

ボクたちが居るビルは、絵画の額縁を作る多聞堂さんの持ちビルである。
現在は三代目が継いでいるが、多聞堂さんは宮内庁御用達の由緒ある老舗で、小津安二郎監督の古い映画などにも美術担当として最後の字幕に多聞堂の名が登場している。

このビルの一階が喫茶店になっている。
この喫茶店の人間模様がそれなりに面白い。

ここには、多くの若者たちに混じって、韓国人のおばさん達がたむろしていて、元気の良い韓国語が飛び交っている。
そして、注意深く観察していると、ヤクザ者の客も多い。
確かに、「ヤッカン通り」の名に恥じぬ地域である。

最近はあまり聞かれないが、一時は、この界隈での拳銃の発砲騒ぎなども、ちょくちょくあったものである。
ヤクザは風体からも何となく、それと分かるが、最近では、いわゆる経済ヤクザも多いので、昔ほど、ヤクザヤクザしていない。

ただ、彼等は組織の序列の上下関係かはっきりしているらしく、序列の上の人間にはやたらと礼儀正しい。
挨拶の交わし方で、ああ、この連中はヤクザだったんだな、と分かることも多い。
それほど、彼等の組織での上下関係は、整然としている様子である。

それと比べる訳でもないが、ボクたちの会社はそれと全く反対、対称的な存在である。
ボクたちの会社には、ほとんど上下関係が無い。
したがって、ボクの存在も含めて、上司という認識を持っているスタッフは少ない。

ボクが、スタッフを十数人引き連れて飲みに行き、ワイワイガヤガヤやっているその様子を見て、ボクの知る年配の常連さんが、「あなたの会社は本当に良い会社ですね」と云う。
どうしてかと云うと、社長にゴマをすったり、へつらったりする社員が全く見当たらないからだ、と云うのである。

改めて、そう指摘されると確かにボクのことを気にするような者が誰ひとりもいないことに気がついた。
みんな、遠慮なく、のびのび気まま放題に飲んで歌っている。

その年配の常連さんは、かつては大会社のお偉いさんだった人物である。
「こういう会社はめったにはありません。がんばって下さいよ」と励まされた。

それをボクは素直に誉め言葉として受け止め、喜んでいる。
これがボクの望む会社の形の、ひとつの側面である。

ボクは、スタッフにとって、常に空気のような存在でいたいと願っているからである。

   「遥かなり 色即是空 馬鹿社長」


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【小田昭太郎】
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