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ある若手スタッフの退職

新入社員たちと入れ替わるように、この3月で会社を自ら辞した若手男性スタッフがいる。

入社して丸2年での退社だった。
彼は新卒の新入社員として手続き通りに正規の面接を受けて入社した社員だった。
とても気持ちが美しく純粋で、感きわまると涙を流すような、優しい青年だった。

ボクのブログなども読んでくれていて、感じることがあると、それについて恥ずかしそうに話しかけて来たが、気が弱いのか、あまりにも遠慮がちで、自分の意思を十分、相手に伝えることが苦手な様子がうかがえた。

とにかく、何事にも、真面目で、真剣だった。
ところが、世の中、なかなか上手くは行かないものである。

入社後しばらくしてから、アシスタントディレクターを上手に指導するベテランのプロデューサーに彼を託した。
それから数ヶ月後、そのプロデューサーから、自分の手には負えないとの話が戻って来た。
トラブルが多く、注意をしても埒があかないのだと云う。

どういう事情かと、ボクが中に入って、彼とプロデューサーと3人で話し合ったことがある。
例えば、と、プロデューサーから、注意すべき具体例をあげて指摘されても、始めのうちは、一体自分のどこが悪くて問題になっているのかが、分からない様子だった。
彼は何事にも、一生懸命に取り組んでいることは間違いなく、その点では立派なのだった。

そして、噛み砕くように、説明するとようやく理解を示し、そうだったのかと納得し、今後は注意します、と実に謙虚だった。
その様子から類推して、ある意味、今後、彼が様々な局面に対応していくのは大変だろうし、困難を伴うだろと予測できた。
しかし、もう一度チャンスが欲しいとの彼の希望を聞き入れ、そのプロデューサーに再び託すことにした。
結果は変わらなかった。

その後も、何人かのプロデューサーの下で仕事についたが、どうしても周囲との歯車が噛み合わない。
彼はベストを尽くしている。
ボクも、どのように育てれば良いのかに苦慮していた。

今年の彼からの手書きの年賀状には「日々楽しく仕事させて頂いております。昨年は苦労しているように思われたとは存じますが、私は毎日成長できる有り難いものだと思って過ごさせて頂いております。今年こそ企画が通り、一本作れるように、まずは頑張りたいと思います。本年も何卒よろしくお願いいたします」とあった。

彼は努力してやる気でいるな、もう少しこのまま様子をみようと思っていた。
そして、最近になって、番組の企画をひとつ実現させた、との話を聞いていた。

そんな矢先に、彼の口から辞めたいとの話が出たのだった。
ゆっくりと彼の話を聞いた。

「年賀状で社長に約束したように、企画を通せて良かったです」と遠慮がちに、彼は云った。
今後の道はまだ決めてはいない、一旦故郷に戻ろうかと考えている、とも語った。

引きとめれば、もしかすると彼の気持ちは変わったかもしれない。
しかし、ボクは、あえて止めなかった。
その方が彼にとって良いとボクは判断したからである。

情に流されてここで引き留めても、結局、彼の苦悩は大きくなるだけだと思った。
2年後、3年後、あるいはもう少し後で、更なる大きな苦労が待ち構えていることは明らかだった。
「ボクが言うのも無責任だけど、キミは本当に良い奴だから、幸せになって欲しいと思う。」とボクは云った。

3月31日。
会社を去る日、彼は「本当にお世話になりました」と礼儀正しく挨拶に訪れ、洒落た菓子折りを置いて行った。
ここまで出来る若者は珍しい。
どこまでも、真面目で実直な青年だった。

彼を採用した責任とボクの力不足を同時に感じないではいられない。
しかし、ボクには、彼の幸せを祈ることしかできないでいる。

      「残るのも 去るのも地獄 浮世かな」


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