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小指の思い出

小指にも役目がある。
この指が無いと、約束ができない。
「指きり」ができない。

昔、子供たちに「指きりげんまん、嘘ついたら、針千本飲ます」などと言って約束させられたことを幻のように思い出す。
お恥ずかしい事に、初めて知ったのだが、「げんまん」とは「拳万」で、げんこつ一万回のことらしい。

指きりは、ヤクザが不始末を起こした際に、小指を切り落とすので、漠然と、それに関係があるのかなと思っていたが、まったく関係が無いようだ。

なんでも、昔、遊女が自分の気持ちの証として、約束を交わす際に小指を切って添えたというのだが、そんなことが実際に行われていたのだろうか。
もしかすると、遊郭に売られて身動きの出来なくなった遊女が、自由と引き換えに小指を差し出すことがあったのかもしれない。

指きりの、そんな由来を聞くと、簡単に「指きりげんまん」の約束など出来なくなってしまいそうである。

小指と聞くと、ボクなどはすぐに、往年の歌手・伊東ゆかりのヒット曲「小指の思い出」を思い浮かべるが、ボクにも小指の思い出がある。

もう20年近く前のことになる。
ボクもまだ50歳代前半で元気の良かった頃の話である。

その頃は、毎晩、若いスタッフたちと飲み歩いていた。
新宿四谷荒木町に行きつけのスナック「千恵」があり、最後は必ず、その店に辿り着き、明け方近くまで騒いでいたものである。

そんな、いつも飲んでいた若いスタッフのひとりに、とても頑固な男がいた。
彼は、当時、まだそれほど多くはなかったスタッフの長男坊的な存在で、ボクも若い衆のリーダーとして大切にしていた。
原因は忘れたが、激論になり、余りにも、彼の物分かりが悪いので、酒の勢いもあり、それこそ「げんまん」でゴツンと彼の頭を殴った。
ところが、彼は文字通りの、並みはずれた石頭の持ち主で、コブのひとつもできなかった。

それにひきかえ、ボクは右手の小指を剥離骨折し、なんと全治するのに3カ月もかかったのだった。
これが、ボクの恥ずかしくも痛い「小指の思い出」である。
その行きつけだった荒木町のスナックは、お店を閉じて、もう数年になる。

昨日、もうすぐ催す予定の会社のお花見に誘うために、そのスナックを経営していたママのお千恵さんに電話をした。
「わたしも電話をしようと思ってたのよ」と電話越しに明るい声が返って来た。

「来月、故郷の鹿児島のホスピスに入る予定なのよ」
ボクは絶句した。

お千恵さんには、口では語れないほどのお世話になった。
そして迷惑もかけた。
青春時代の多くの時間をお千恵さんの店で過ごしたのだった。
ボクの人生における、いくつもの大切な出会いや別れが、お千恵さんのお店を舞台として展開したのだった。

そのお千恵さんが大腸ガンを患い、昨年の春、手術を受けたことは聞いていた。
「2カ月か、3カ月か………、あと、何カ月の命かは分からないけれど。お花見には身体の調子と相談して行くようにするよ」
無理して明るい調子で話そうとしているお千恵さんの声に、ボクは喘いだ。
すぐには言葉が出なかった。

ガンがそこまでお千恵さんを蝕んでいるとは予想もしていなかった。
20年前に骨折した小指が、急に疼きだすのを感じた。

   「簡単に 今日は書けない 五七五」


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