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たかがトン汁、されどトン汁

ボクが時折昼食を食べに行っている小料理屋がある。
実は、夜に利用したことは無い。

昼食時には、さばの塩焼きとか味噌煮など、数種類の定食が用意されているが、ここの田舎風のトン汁が絶品で、それが目当てで通っていた。

カウンターとテーブル席を合わせて、お客が20人も入れば満席になるような、こじんまりとした感じの良いお店である。
お昼の3時間ほどの間は、入れ替わり立ち替わり、いつもお客で満杯で、入口に並ぶ人たちの姿を見ることもまれではない。
とにかく人気のお店である。

狭い厨房には、こんなにも必要ないのでは、と思えるほどの大勢のパートのおばさんたちで溢れて、実に活気のあるお店だった。

いつものように、昼食を食べに寄った所、厨房を仕切る女将さんがこれまでとは別の女性に変わっていた。
聞くところによると、つい2~3日前に、前の女将さんが経営を譲り、故郷に引き揚げたのだと云う。

店の雰囲気は以前とそれほど変わらなかったが、肝心のトン汁の味付けがまるで違っていた。
特別に不味い訳ではないが、ボクが求めていた以前のトン汁とは似て非なるものに変わってしまっていた。
おまけに、ぬるくてがっかりとさせられた。

トン汁が、前の女将の自慢の味付けであったのだと、その時に知った。

そんなことがあって、なんとなく、二週間ほど足が遠のいていたのだが、その後、どうなったかとお店を覗いた。
まだ昼時の忙しい筈の時間だったが、お客が入るでなく、入らないでなく、と云った状態で、カウンターには一人置きに客が座り、4人掛けのテーブル席に1人のお客、という具合だった。

一時はあれだけ沢山の従業員たちの活気で賑わっていたのが、その数もアレッと思うほど少なくなっていた。
ボクたちは3人連れで、店の人の案内を待っていたが、ウンでもなければ、スンでもない。
顔見知りだった店の女性も、ボクたちが待っていることを承知だが、挨拶も無い。

何とも不自然で険悪な雰囲気が漂っている。
新しい女将と上手く折り合いがついていない様子が即座に見て取れた。
ボクたちは居づらくなって店を出た。
後ろから、「すみません」という小さな声が聞こえた。

ついこの間まで、あれだけ繁盛していたお店がまさに数日にしてこの有様である。

恐らく、これまで、女将の心の込もったトン汁と、スタッフを大切にする心意気が、活気を生み出し、それが客への見えないサービスを生み出し、多くの客を引き寄せていたのだろう。
大切なトン汁の味の引き継ぎを怠り、無駄と思える人件費を節減した途端、お店は活気を失い、次第に客が減ったに違いない。

お客は正直で冷酷である。
たかがトン汁、されどトン汁。
物を作り売る客商売とは難しいと改めて思う。

      「久し振り 食べてみたいな トン汁を」




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